前回は、「社会地図」の歴史から19世紀後半ロンドンの貧困について見ていきました。今回は、チャールズ・ブースが分析した「居住層」と「特定の小売業」の関係について解説します。

収入の「手段と質」を分析していくと…

貧困を定義するにあたってチャールズ・ブースはロンドン市の人口統計から就労の有無、就労形態の40分類と学齢期に達した子供のいる家庭のヒアリング調査を基に居住者のタイプを8グループに分類した。

 

収入の手段と質は生活に大きく影響する。不安定な収入の日雇い、不定期就労者かそれとも正社員としての安定した収入か、自営業者で比較的自由に使えるキャッシュを持っているか、資産を持ち不労所得が手に入るのか。

 

次の分類はチャールズ・ブースの調査によって定義され再集計された結果をわかりやすくするため著者が5グループに集約したものである。「最下層」から「貧困者」までを合計すると30.7%となり、社会民主連盟の25%より貧困層が多いという結果が示されている。

 

最下層 不規則な日雇い労働者・浮浪者・準犯罪者の最下層  0.9%

極貧者 臨時日雇い労働者の極貧層             7.5%

貧困者 不規則な収入もしくは少額賃金の貧困労働者層   22.3%

労働者階級 規則的に雇用され公正な賃金の労働者階級   51.5%

中産階級 下層以上の中産階級              17.8%

雑貨商の58%が、33%の貧困地区に集中

彼の研究では居住者と産業の関係についても言及している。この報告書によれば、ロンドンにある雑貨商の58%が33%の貧困地区に集中していることを指摘している。居住者と小売業の関係。居住者の質が特定の小売業が成立する条件となることを統計的に明らかにした。

 

もしロンドン中にまんべんなく雑貨商が分布しているのであれば33%の貧困地区においても、33%の雑貨商が分布しているはずである。ところが58%というのは偶然だけでは説明できない集積度である。周辺の居住者の質が特定の小売業を成立させることを実証した研究となった(『東京の社会地図』倉沢進編、東京大学出版会、1986)。

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

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酒井 嘉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

「ところ変われば、(売れる)品も変わる」──。現代において「流行」とは、企業がつくり出すものではない。様々な情報へ日常的に触れる消費者に「選ばれて」初めて、流行の商品・サービスとして流通する。ビッグデータ全盛の…

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