相続税の増税、地価の上昇などで、不動産オーナーの相続税負担は増えるばかり。本連載では、税理士法人チェスター監修、株式会社エッサム編集協力、円満相続を応援する税理士の会著、『相続税の疑問がすっきり! わかる本』(あさ出版)から一部を抜粋し、不動産オーナーのための「相続税の節税」に関する基礎知識を解説します。

生前贈与と生命保険の活用で「課税対象額を減らす」

これまで繰り返し述べてきたように、相続税の節税で最も重要なことは、生前の対策で
す。生前に適切な相続対策を行うことで、納税額を大幅に下げる「ことが可能となります。
生前にできる相続税対策は、主に次の2種類があります。

 

1 課税対象額を減らす

 

2 財産の評価額を減らす

 

【課税対象額を減らす】

当たり前のことですが、持っている財産が減れば、納めるべき税額は少なくなります。
この「財産を減らす」ためのポピュラーな方法が、生前贈与と生命保険の活用です。

 

・生前贈与の活用
税金に詳しくない人たちにも「年間110万円までは贈与税がかからない」という知識は浸透しているため、定年退職した父親が「贈与税がかからない範囲で、定期的に妻や子どもの口座に財産を移している」という話をよく耳にします。これは「暦年贈与」といって、贈与税の基礎控除額が110万円であることを用いた方法です。この他にも「配偶者控除」「住宅資金贈与の特例」「相続時精算課税」など、贈与税がかからない方法がいくつかあります。それぞれの詳細は、本連載で説明します。

 

・生命保険の活用
生命保険契約を結ぶと、毎月掛金が必要になります。この掛金によって財産は少しずつ
ですが減少していきますが、死亡すると「死亡保険金」として多額の現金が支払われます。

 

相続税では死亡保険金に対する非課税枠があるため、現金として持っているよりも、納
税額は少なくなります。また遺産分割の対象外となるため受取人をあらかじめ指定できる、納税の資金に充てられるなど、さまざまなメリットがあります。詳しくは第9回で説明します。

小規模宅地の特例を最大限に活かせれば・・・

【財産の評価額を減らす】

繰り返し述べてきたように、相続財産のなかでも最も大きな金額となるのが土地です。土地の金額が高ければ高いほど相続税は上がりますが、分割できるものではないため、相続人同士の争いの元になってしまいます。また、評価額が高くても容易に売却できるものではなく「相続税の納税期限までに現金が用意できない」といったトラブルも頻繁に起こっています。

 

そのため、生前の不動産対策はとくに重要です。

 

・郊外の広い土地を売却して、路線価が高い都心のマンションに引っ越す
 →小規模宅地の特例(80%減額)を最大限に活かす

 

・自宅を賃貸併用住宅に建て替える
・畑に賃貸住宅を建てる

→貸家建付地評価で減額を図りつつ、家賃収入を得る

 

このような生前対策を行ったことで、億単位の節税を実現した事例もあります。逆に考えると、生前に対策をしていなければ、家族に億単位もの負担を強いることになってしまうのです。相続対策にはさまざまな方法があり、複数の方法を組み合わせることも可能です。

 

自分の財産にはどの方法が節税に有効であるのか、しっかりと確認をして、準備を進めていきましょう。分からないこと、不安なことがあるときは1人で悩まず、専門家に相談をしてみましょう。

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    本連載は、2015年9月16日刊行の書籍『相続税の疑問がすっきり! わかる本』から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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