不動産依存が深刻な中国 住宅の価格と在庫の実態は?

前回は、東北部の課題と、公共投資が抱える問題について取り上げました。今回は、住宅の価格と在庫の実態について見ていきます。※本連載では、中国経済の下振れリスク、その抱える課題について探っていきます。

不動産業が支える東部・沿海部の経済成長

前回の続きです。

 

他方、東部・沿海部の堅調な成長は、バブル的な不動産市況に支えられている面が大きい(図表1)。多くの都市が時に単月の上昇率が前年比50%を超える上昇を示し、また市況が低迷していた14年中頃に積み上がっていた住宅販売在庫も急激に減少し、むしろ在庫がひっ迫する過熱を示している(図表2)。

 

主要35都市の在庫対月販売高(住宅在庫面積/直近6か月の月平均販売面積)は14年6月18.7か月から16年12月8.9か月まで低下している(図表3)。16年不動産業の成長率はGDP成長率より高い8.6%、GDPシェアは6.5%で、GDP成長率への寄与度は8.3%(8.6%×0.065/6.7%)だ。

 

しかし、関連産業を含めるとGDPシェアは20〜25%に及ぶとの推計もある(中銀国際他推計)。1〜9月、上海では不動産の成長率への寄与度は18%、不動産に密接に関連する金融部門も含めると49%、これを除くと各々5.5%、4%未満の成長に止まる。北京もほぼ同様の状況だ(11月16日付21世紀経済報道)。

 

【図表1】大都市新築住宅価格(前月比)

(注1)保障性住宅を含む。
(注2)1線級都市は北京、上海、深圳、広州、直轄都市は北京、上海、天津、重慶。
(出所)中国国家統計局
(注1)保障性住宅を含む。
(注2)1線級都市は北京、上海、深圳、広州、直轄都市は北京、上海、天津、重慶。
(出所)中国国家統計局

 
【図表2】1線級都市住宅在庫

(注)1線級都市は、北京、上海、広州、深圳
(資料)上海易居房地産研究院
(注)1線級都市は、北京、上海、広州、深圳
(資料)上海易居房地産研究院


【図表3】主要35都市住宅在庫月数(2016年12月、14年6月比較)

(注1)住宅在庫面積を直近6か月の月平均販売面積で除した値。
(注2)棒グラフの濃い青が1線級都市、薄い青が2線級都市、黄色が3線級都市、各都市の左が2016年12月、右が14年6月。
横線は全国平均で、黒が2016年12月、赤が14年6月。
(資料)上海易居房地産研究院資料より筆者作成
(注1)住宅在庫面積を直近6か月の月平均販売面積で除した値。
(注2)棒グラフの濃い青が1線級都市、薄い青が2線級都市、黄色が3線級都市、各都市の左が2016年12月、右が14年6月。横線は全国平均で、黒が2016年12月、赤が14年6月。
(資料)上海易居房地産研究院資料より筆者作成

膨らんでいる住宅ローンが不良債権化するリスク

中国では以前から、不動産が経済を「綁架」、拉致しているとの声が聞かれる(2016年9月21日付第一財経)。経済の不動産依存を見る代表的指標、不動産投資の対各地域総投資比と対GDP比の合理的な水準は各々25%以内、10%以内と見られているが(中国不動産協会副会長)、16年、黒龍江、新疆を除く29省市区のうち、各々、上海を筆頭に6、海南を筆頭に22が合理水準を超える。特に浙江、海南、北京、上海、広東は両指標とも合理水準を上回っている(図表4)。不動産投資伸び率(1〜9月)では、寧夏、河南、天津、広西、青海、広東、江西が18〜26%増と高い。広東は伸び率も対総投資シェアも高いという二重の不動産依存になっている。

 

主要30都市ベース(多くは省都)で見ると、対総投資比で21都市、GDP比では深圳を除く29都市が合理水準を超え、中でも、三亜、海口(何れも海南の都市)の対GDP比は各々86%、44%と際立って高い。

 

【図表4】不動産投資依存、上位10省市区(2016年、%)

(注)山西、西蔵、新疆、吉林、黒龍江、遼寧はデータ取れず、含まれていない。
(出所)中国国家統計局、2017年3月4日付房地産報より筆者作成
(注)山西、西蔵、新疆、吉林、黒龍江、遼寧はデータ取れず、含まれていない。
(出所)中国国家統計局、2017年3月4日付房地産報より筆者作成


 
景気減速下で高騰する不動産市況を受け、銀行は担保付住宅ローンを比較的安全な資産と見て、これを急増させた。16年末の人民元融資残高は106.6兆元(前年末比13.5%増)、このうち個人向け住宅ローン残高は19.14兆元(同35%増)、新規融資の40%近くが住宅ローン融資に向かった。中でも、4大銀行の16年新規融資の60%以上は個人向け住宅ローン(建設63.8%、工商64.5%、農業78.17%、中国81.77%)、金額で2.7兆元、毎日平均75億元程度を融資している計算になる。仮に不動産価格が30%下落すると、約4.1兆元の住宅ローンが不良債権化し、不良債権比率を4%以上押し上げるとの推計もあり(2016年10月8日付彭博社)、不動産市況に内在するシステミックリスクが膨らんでいる。

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) 独立取締役

1976年、大蔵省入省。1990年、アジア開発銀行理事代理、2000年、香港理工大学中国商業センター客員研究員。2003年、アジア開発銀行研究所総務部長、2006年以降、財務省神戸税関長、財務省財務総合政策研究所次長、財務省大臣官房政策評価審議官、2010年から大和総研常務理事等の要職を歴任。 2015年、NWB(日本ウェルス)の独立取締役に就任。一橋大学卒。香港中文大学普通話課程修了。
WEBサイト https://jp.www.nipponwealth.com/

著者紹介

連載下振れリスクを抱える中国経済 求められる「構造転換」と「脱不動産依存」

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