本連載では、相続税対策を始めとするあらゆる資産税業務に精通したプロ集団、JPコンサルタンツ・グループによる著書、『三者の視点から見た広大地評価の実践事例』(法令出版)より一部を抜粋し、税理士、不動産鑑定士、元税務調査官の三者の視点から見た、広大地評価についての考え方・評価方法を事例をもとに解説していきます。

道路開設が必要と判断されれば、広大地の評価に

Q:私の所有している土地は、下図のように戸建住宅と分譲マンションが混在しているところにある駐車場です。この土地は1,200㎡と広く、広大地の評価が受けられると思いますが、いかがでしょうか。

 

[図表]近隣の住宅地図

 

<回答>

 

容積率が200%の地域は、マンション適地かどうかの判断が一番難しい地域です。

 

設例では、戸建住宅と分譲マンションが混在している地域ということですが、「明らかにマンション適地」とは判断できませんので、「明らかにマンション適地と認められる土地以外の土地」に該当し、道路開設が必要と判断されれば広大地の評価が出来るものと判断します。

 

道路開設が必要かどうかの判断については、評価担当者の意見にありますように開発想定図を作成し、どのように開発するのが良いかを判断します。

 

マンション適地かどうかの判断、その土地の開発想定図の作成に当たっては、税理士単独での判断は危険性がありますので、不動産鑑定士、測量士、建築士、不動産業者等の判断を求めた方が良いと思います。

マンションに適した土地かどうかも重要な判断基準

<評価担当者の見解>

 

17年情報には、「・・・戸建住宅とマンション等が混在する地域(主に容積率200%の地域)にあっては、最有効使用の判定が困難な場合もあることから、このような場合には周囲の状況や専門家の意見から判断して明らかにマンション等の敷地に適していると認められる土地を除き、広大地に該当する。」と記載されており、開発想定図及び近隣の住宅地図等から判断してもマンション適地には該当せず、広大地の評価の適用は受けられるものと判断します。

 

 

<不動産鑑定士の見解>

 

最有効使用、分かり易くいえば、評価対象地を開発する不動産業者の投資採算性によって判断します。

 

本問の場合はマンション適地ではない土地、かつ、道路開設が必要な土地として、広大地の評価の対象となる土地と判断します。

 

最有効使用の判定は、周辺地域の不動産利用状況を基礎として、ミクロ的見地から当該土地の形状、道路との位置関係等のほか、マクロ的見地から周辺地域の開発動向やさらに公益的な経済動向等も勘案することが必要になります。

 

例えば、同じ土地であっても、経済が停滞気味であるとか、建築コストの上昇によりマンション建設費とマンション分譲価格が合わず、「戸建分譲」が選好される時期もあるでしょうし、住宅取得意欲の高まり、住宅税制の整備から「マンション分譲」が選好される時期もあるでしょう。

 

戸建住宅と分譲マンションが混在している住宅地の場合、「10年前に建築されたマンションが存するから」という理由でマンション適地の判断を行っている場合もあるように思われますが、相続開始時点から将来に向けた状況を重視して、最有効使用を判定した上で、広大地補正率適用の可否を判断すべきものと考えます。

 

この話は次回に続きます。

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

三者の視点から見た 広大地評価の実践事例

小林 登,佐藤 健一,三上 満,斎藤 六郎,安田 修

法令出版

広大地の評価の適用を受けられるかどうかで、納税額に大きな差が出ます。しかし、広大地の評価に当たって適用される法律(建築基準法、都市計画法)を駆使し、かつ複雑になりすぎた評価通達を踏まえて評価額を算出することは、…

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