前回は、患者の満足度が高い「フラットな組織のクリニック」について取り上げました。今回は、クリニックの集患を成功に導く「ホスピタリティ精神」について見ていきます。

企業の目的は「社会や顧客のニーズに応える」こと

ビジネスや経営というと、「利益を上げること(お金を稼ぐこと)」が大切だと早とちりする方がいるのですが、経営で本当に大切なのは、儲けることではありません。

 

「経営学の巨人」と呼ばれるピーター・ドラッカーは「事業の目的は顧客の創造である。買わないことを選択できる第三者が、喜んで自らの購買力と交換してくれるものを提供することである」と記し、「経営の神様」と呼ばれた松下幸之助(パナソニック創業者)は、「企業の目的は社会貢献」との言葉を残しました。

 

一見、異なる意見のようですが、実はどちらも同じことを主張しています。つまり、企業の目的は、目先の利益を追求することではなく、社会や顧客のニーズに応えることであるというのです。

 

では、そのためには何が必要なのか。私は、顧客創造や社会貢献の理念や思想を、スタッフに周知徹底していくことが大切だと考えています。もし理念や思想がなかったとしたら、スタッフは、医師の機嫌とか、ボーナスの金額とか、同僚との人間関係とか、患者のクレームとか、目先のことにとらわれて本質が見えなくなってしまいます。そのようなクリニックは、理念や思想のしっかりした近隣のクリニックに患者を取られて、衰退していくのです。

今、何をすることが患者のためになるのか?

ここでいう理念や思想とは「ホスピタリティ」といい換えてもいいかもしれません。「今何をすることが患者のためになるのか」をしっかりと意識して行動することがホスピタリティであり、それを忘れたクリニックに繁栄は訪れません。

 

具体的にいえば、順番予約システムの導入などが典型的です。医師の都合だけを考えれば、予約システムなど導入しなくてもよいわけです。そんなものがなくても患者は列に並んで待ってくれるのですし、システムの運用に頭を悩まされることもなくなります。

 

しかし、患者の立場に立ってみれば、予約システムがあるかないかでずいぶんとQOLが違ってきます。子育てをしている主婦にとってみれば、30分間でも家で家事ができるか、それとも待合室でただ待っているだけなのかは、クリニックの選択に大きな影響を及ぼします。

 

私たちは、忙しくしていればいるほど、目の前の仕事に追われてホスピタリティを失ってしまいます。待っている人が多ければ、目の前の患者に早く立ち去ってほしいと思いますし、患者が連れている子どもが泣きだしたら「早く泣き止ませてくれ」と思ってしまいます。しかし、常にホスピタリティは最優先であるという理念と思想を徹底していくことで、自分ではなく患者に目を向けることができるようになるのです。

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    本連載は、2017年1月26日刊行の書籍『自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

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    市川 直樹

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