院内感染の予防を狙ったクリニックの設計事例

前回は、「患者への啓蒙教育」がクリニックの混雑緩和につながる理由を解説しました。今回は、院内感染の予防を狙ったクリニックの設計事例を見ていきます。

しばしば二次感染の場になる「病院の待合室」

最新のITシステムによる待ち時間の解消だけが、新しいクリニックの魅力というわけではもちろんありません。新しいクリニックの新しい建物、新しい待合室、新しい診察室といったものは、それを意図しなくても、自然に患者をわくわくさせるものです(ですから、既存の建物をそのまま再利用するよりも、新築もしくは徹底的にリフォームする方がよいのです)。また、建物の設計、内部のレイアウトにも、旧来のクリニックとは異なるユニークさを押し出すことはできます。

 

これは私が開業支援して2011年に愛知県岡崎市で開院した、しいの木こどもクリニックの例です。

 

院長である小児科医は、勤務医時代に、病院の待合室がしばしば二次感染の場になっていることに頭を悩ませていました。小さい子どもは抵抗力が弱いので、ちょっとしたことでも感染しやすいですし、すでに病を患っているのであればなおさらです。保護者の中にも、「病院に行くと、逆に風邪の菌をもらいそうで怖い」と話している人が少なくありませんでした。本来、クリニックで感染したなどということは起きてはならないのです。空気清浄器や頻繁な除菌などで、クリニック自体を清潔に保つことはもちろんですが、除菌にも限界があります。

 

そこで、小児科医と私は2つの方法を考えました。ひとつは、予約システムの導入で待合室にいる時間をできるだけ少なくすることです。そしてもうひとつは、待合室を、それぞれの患者に合わせて、個室化することでした。

 

下記図表は、このクリニックの1階の見取り図です。

 

[図表]小児科クリニック見取り図

 

見てわかるように、待合室は8つの個室に分かれていて、その他に授乳室と、麻疹、水痘など空気感染のおそれのある患者向けの隔離室とが作られています。個室以外にも受付前にはソファが置かれていて、そこで待機することもできますが、原則、すべての患者は個室に案内して診察を待ってもらうことになっています。

 

個室内には3~4人が座れるソファと、その対面には大きなモニターが置かれています。このモニターでは子ども向けのアニメDVDなどを流します。子どもが飽きないようなものを調査して選び、著作権にも配慮されたものを使用しています。飽きっぽい子どもたちが騒ぐことなく静かに待てるようなアイデアです。
 

ちなみに、よく小児科のクリニックに置かれているような、絵本や玩具やぬいぐるみは置いていません。それらは除菌が難しくて二次感染の原因になりかねないことと、最近の親御さんはたいてい自分たちで子どもをあやすための本や玩具を持ち歩いていることからです。一応、壁には子どもが遊べるような迷路や親御さん向けの医学情報なども貼ってありますが、それらは完全にラミネート加工してあり、簡単に除菌できるようになっています。幸いなことに、個室待合は好評で、患者がリピートしてくる理由のひとつにもなっています。

入り口ですれ違う際にも、接触感染のリスクが・・・

また、院内感染防止への取り組みはそれだけではありませんでした。

 

クリニックの入り口は、入ってくる患者と出ていく患者がすれ違う場所です。どんなに室内で気を付けていても、すれ違ったときに接触感染のリスクは高まります。特に子どもの場合、互いに距離をうまく取れずにぶつかったり、大人が想像しないような接触をすることが多いのです。

 

そこで、通常のクリニックに比べ入り口をかなり広くとりました。わかりやすく言うと、双子用のベビーカーがゆったり通れる程度です。さらにクリニック開業時には、コンシェルジュを入り口に配置し、患者がすれ違いそうになる時には患者の交通整理をさせていました。しかし、それも今は必要なくなりました。なぜなら、親御さんたちがその理念を理解してくださり、自発的に入口で譲り合いをするようになったからです。院長先生が実現させたかった理念が患者に浸透していった好例といえるでしょう。

 

また、駐車場にも一工夫しました。一般的に駐車場は台数が多ければ多いほどよいと思われがちですが、数よりも「質」が大切になります。小児科の場合は特に、ベビーカーに幼児を乗せる親御さんが多いため、駐車場に余裕がないとベビーカーの上げ下ろしができません。そこで、本来は50台駐車できるところに、一台当たりのスペースをぜいたくにとり、31台の駐車スペースにしました。こうした考え方は、小児科だけでなく高齢者が多くあつまることが予想される内科や眼科などにも共通するものです。

 

来院する患者の年齢層に合わせて、設計の段階からさまざまな配慮をすることがよいクリニックづくりの第一歩なのです。病院のレイアウトなどどこもたいして変わらないように思われるかもしれませんが、このようなちょっとしたこだわりや患者への気配りを加えることで、他のクリニックとの明確な差別化を図ることができます。

本連載は、2017年1月26日刊行の書籍『自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

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連載自己資金ゼロで「儲かるクリニック」を開業する方法

株式会社GSKコミュニケーションズ 代表取締役

1971年生まれ。
1999年から労務を主にしたコンサルティング業務を行い、2004年、株式会社GSKコミュニケーションズを設立。
不動産賃貸業、管理・ソフトウェア開発のほか、飲食業や人材派遣、自動車販売業などさまざまな業種のコンサルティングに従事。さらに2006年4月より「大志の会」「有志の集い」「市川直樹塾」を主宰し、中小企業経営者に向けて講演会やシンポジウムなどを積極的に開催。これまで300社以上の中小企業経営者のコンサルティングに取り組んでいる。 2011年にはしいの木子どもクリニックを開業、クリニックと調剤薬局の経営コンサルティングを手がけ、開業以来5年間で約9万人の患者の集患に成功している。

著者紹介

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

市川 直樹

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医は慢性的な医師不足で時間外の労働が多く、給与も働きに見合わず、過酷な労働環境におかれています。 一方、そうした状況から理想の医療の実現を目標に開業する医師もいますが、都市圏のクリニックは今や乱立状態にあり…

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