前回は、クリニックの立地選定段階から整えたい「調剤薬局」との協力体制について取り上げました。今回は、クリニック開業時から、薬品卸会社や医療機器販売会社との「癒着」に気をつけるべき理由を解説します。

「情」は大切だが、取引では透明性と公平性を確保

薬品卸会社や医療機器販売会社に無料の開業支援をしてもらった場合、開業後にどうしてもその会社と、ビジネスのお付き合いをすることになります。すると、法的な縛りなどはありませんが、義理人情的にも、心情的にも、他の会社から薬品や医療機器を仕入れるのは難しくなるでしょう。

 

もちろん、適正な価格で、希望するメーカーの製品が購入できるのであれば、薬品卸会社や医療機器販売会社がどこであっても構わないとはいえるでしょう。しかし、ひとつの会社にすべてを任せてしまうことは、競争がなくなることなので、後々、絶対に問題が起きないとは限りません。情は情で大切ですが、取引の透明性と公平性は確保しておいた方が安全です。

 

私の会社は、医療機器の販売も行っているので、開業支援を行ったクリニックに、医療機器を直接販売することもできます。しかし、そのような癒着はお互いのためにならないと考えて、コンサルティングを請け負った会社に対しては、直接、医療機器の販売をしないことにしています。

仕入れ値の相場がわかれば、タフな価格交渉が可能に

ではどうするのかといえば、あくまでもコンサルティングとアドバイスに徹して、他の会社から医療機器を仕入れてもらうのです。このとき、私の会社の医療機器販売の経験が役に立ちます。というのも、医療機器の仕入れ値の相場がわかっているので、販売会社が高額すぎる価格を提示してきたときにはすぐにわかりますし、タフな価格交渉ができるのです。

 

だからといって、販売会社の利益が削られるような無理な買い叩きはしません。世の中は持ちつ持たれつです。適正価格で販売をしてくれるのであれば、私たちもそれを素直に受け入れます。薬品も医療機器も、それからその他の設備についても、クリニックに導入する際には、相見積もりは不可欠です。価格競争をさせることで、よりよい品質の製品を適切な価格で手に入れることは、ビジネスを行っている人には当然の感覚でしょう。

 

しかし、医師の方は相見積もりを取って厳格に価格比較をすることもなく、自分が信頼できると思えばそれだけで購入を決めてしまうことが多いようです。たしかに、開業となればいくらでも考えるべきことはありますから、薬品や医療機器を少しでも安く購入しようなどということはどうでもいいことなのかもしれません。多少、高く購入したとしても、その分のアフターサービスが手厚ければ取り返しができますし、何よりも、一刻も早く開業することがキャッシュフローを円滑にするには欠かせないからです。

 

しかし、そのような放漫経営によって、資金繰りが苦しくなったクリニックは、一つや二つではありません。医師が一人でできないのであれば、そんなときこそ開業支援コンサルティングや経営支援コンサルティングの出番です。自分一人で、それぞれの会社を回って交渉するのは大変なことです。私の会社のような海千山千の会社が間に入ることで、そのような負担を減らすだけでなく、それ以上の価格メリットを享受することができます。

本連載は、2017年1月26日刊行の書籍『自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

自己資金ゼロ・ローリスクで 儲かるクリニックを開業する方法

市川 直樹

幻冬舎メディアコンサルティング

勤務医は慢性的な医師不足で時間外の労働が多く、給与も働きに見合わず、過酷な労働環境におかれています。 一方、そうした状況から理想の医療の実現を目標に開業する医師もいますが、都市圏のクリニックは今や乱立状態にあり…

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