前回は、クリニックの開業場所の決め手にしたい「人口増加率」について取り上げました。今回は、クリニックの開業場所として「大都市圏の郊外」が適している理由を見ていきます。

徳島県、鳥取県、高知県は医師が多すぎる!?

人口が自然増している自治体がいくらでもあることはわかりましたが、全国に散らばっている人口増加自治体の中から開業場所を探せというのも酷な話です。医師の方にも地縁、血縁、人の縁があって、開業できるならどこでもよいというわけではないからです。

 

そこで、もう少し大局的な視点から、開業場所を絞ってみましょう。

 

下記の図表は、厚生労働省の調査した、都道府県別医師数のグラフです。

 

[図表]都道府県(従業地)別に見た医療施設に従事する人口10万対医者数

 

これは、各都道府県別に人口10万人当たりの医師数を比較したものですが、最も医師が多い京都府が10万人当たり308人、最も医師が少ない埼玉県が10万人当たり153人と、2倍以上の差がついています。

 

つまり、開業するのであれば、医師の多い京都府よりも、医師の少ない埼玉県の方が、より多くの患者の来院を見込めるわけです。ちなみに、10万人当たりの医師数が300人を超えている都道府県は、京都府(308人)、東京都(305人)、徳島県(303人)の、全国に3つしかありません。

 

歴史的にも文化的にも中心地である京都府や東京都は当然として、徳島県に医師が多いことをいぶかしがる人もいますが、徳島県には国立徳島大学の医学部があり、人口が少ないこともあって、非常に医師に恵まれているのです。同じ理由で、国立鳥取大学医学部を抱える鳥取県や、国立高知大学医学部を擁する高知県も、人口当たりの医師数が多くなっています。

「医学部の偏在」も医師数の地域格差の原因に

一方、人口当たり医師数の少ない都道府県はどこでしょう。最も少ないのが埼玉県(153人)、その次が茨城県(170人)、そして千葉県(183人)となっています。これらは、東京都の近郊で首都圏として人口が多いために、医師が不足しているのです。開業をするのであれば、大都市圏の郊外が狙い目かもしれません。

 

上昌広『日本の医療格差は9倍 医師不足の真実』によれば、埼玉県の人口当たり医師数は、南米のチリとほぼ同じ水準だそうです。先進医療国の名を誇る日本ですが、地域によっては医師不足で医療水準が下がっているのかもしれません。

 

同書では、日本の医師数が西高東低であることをも指摘しています。

 

たしかに、上(東日本)から下(西日本)へと並べられた都道府県別のグラフを見ると、明らかに下部(近畿、中国、四国、九州)の方に医師数が多く、上部(北海道、東北、関東、中部)は医師不足にあえいでいる様子がうかがえます。上部で全国平均を上回っているのは、東京都と北陸の三県(石川県、福井県、富山県)だけです。

 

この理由は医学部の偏在にあります。医師数の少ない埼玉県、茨城県、千葉県、そして静岡県は、人口当たりの医学部数でも全国で最下位の四県なのです。これについて同書では、明治から戦前にかけて政府の作った官立の医学部が、明治維新に貢献の高かった西国雄藩が優先されたことを指摘しています。非常に面白い視点です。

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