前回は、不動産ニーズを把握するために「人口動態」について改めて考察しました。今回は、「需給バランス」について見ていきます。

人が集まる街は、実は物件も「供給過剰」状態

前回説明した人口動態に加えて、注目しておきたいのが街の不動産の需給バランスです。収益用不動産を所有するなら、たとえば東京など人口動態から見て人が多く集まる街に持ちたいと考えるのは当然のことです。人が多く集まる街なら、家賃収入を得るうえで最大のリスクである空室を避けやすくなります。ところが、それは不動産投資を考えている人なら誰でも考えます。つまり、人が集まりやすい人気の街には、それだけ不動産が多いというわけです。

 

その顕著な例のひとつが、札幌の不動産問題です。札幌といえば、北海道最大の都市であり、ビジネスでも旅行でも人気の街。北海道大学もあり、学生も多く暮らしています。ところが、実は札幌の中心街には家賃1万円台のワンルームマンションやアパートがゴロゴロしています。これは一体どういうことなのでしょう?

 

北海道の中でも人口が集中する札幌は、道内はもちろん、本州などからも人口が流入しています。ビジネスの拠点であり、観光地としても人気、しかも歓楽街もある。だから、誰でも不動産を所有すれば儲かるはずだ、と考えるわけです。物件が売れれば、建設業者はどんどんマンションやアパートを建てます。

 

その結果、投資物件の供給が極端に過剰になり、家賃を1万円台にしても入居者が決まらないワンルームが溢れました。家賃が1万円台でも入居者が決まらないわけですから、敷金・礼金といった初期費用も極端に安くなっています。一カ月の家賃はホテルに一泊するのとそう変わりません。物件によっては、3泊4日で札幌へ旅行するなら、ワンルームマンションを借りたほうが安い、なんてこともあるかもしれません。

 

もはやこうなってしまうと、利益が出ないからといって売ろうにも売れないという状況です。投資としては完全に失敗といえるでしょう。

 

地域ごとに「需給バランス」を考えることが不可欠

今、札幌で不動産を所有するくらいなら、過疎化が進んでいる青森で不動産を所有する方がよっぽど儲かります。青森は確かに人口が減少傾向にありますが、その分新築物件もそれほど建ちません。土地を担保にしてアパートを建てようにも、土地が安すぎて建てられないのです。需要も少ないのですが、供給も少ないわけですから、ワンルームの家賃も3万〜4万円で推移しているというわけです。

 

この程度のことであれば、ちょっと現地へ行ってみればすぐにわかります。また、実際に行かなくても、賃貸物件情報を紹介するサイトなどで調べれば、賃貸物件の需給感程度ならわかるでしょう。家賃収入で借入金を返済しながら、将来にわたって資産となる物件を所有する。そんな不動産投資を目指すのであれば、地域ごとの需給バランスを調べることが必要になります。

 

 

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    本連載は、2013年8月25日刊行の書籍『なぜ医者は不動産投資に向いているのか?』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    大山 一也

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