前回は、SWOT分析からカンボジアにチャンスを見出した企業の事例を紹介しました。今回は、企業による海外進出におけるターゲット国の選び方を見ていきます。

いまの主要市場を踏まえた「今後の市場」を考える

自社の製品・サービスに合った海外市場を探すといっても、何も知識がなければ、雲をつかむような話になって、机上の空論になりかねません。

 

そこで、海外進出、海外輸出について、ごく一般的な知識程度のことは調べておいたほうがいいでしょう。

 

たとえば、現在、海外輸出を行っている中小企業が、どのような地域を主要市場と考えているか、中小企業庁が行ったアンケート調査から、その結果を表した図表をご覧ください。

[図表] 現在主力である輸出先と今後重視する輸出先の国・地域

出典:中小企業庁「2016年版 中小企業白書」
出典:中小企業庁「2016年版 中小企業白書」

これを見ると、「現在、主力である国・地域」は、中国、北米、韓国、台湾、タイ、西欧、香港となっています。一方、「今後、重視する国・地域」は、中国、北米、タイ、ベトナム、インドネシア、台湾、西欧の順番になっています。

 

中国と北米は、市場規模が大きいので重視するのは当然ですが、その他の地域の将来性にはやや違いがあります。

 

現在の主力輸出先である、韓国、香港、台湾などは、今後は市場の漸減的な縮小が予想されるので、将来的にはあまり重視する輸出先にはなっていません。

 

一方、タイ、ベトナム、インドネシアなどのASEAN諸国は、これから経済成長が進んで市場が大きくなるので、チャンスがあると見られています。

日本市場が縮小したいまこそ、海外に目を向けるべき

かつての高度経済成長期に、日本企業が輸出先として一生懸命、開拓したのは北米と西欧でした。そして北米については、貿易摩擦や経済戦争といわれるほどに、輸出戦略が成功したのはご存じの通りです。

 

たとえば、北米の自動車市場におけるトヨタのシェアは約15%で、GMやフォードのシェアとほとんど変わりありません。ホンダやニッサンのシェアも10%弱ありますから、日系自動車メーカーは合計で30%以上のシェアを獲得していることになります。

 

日本企業が、北米や西欧に一生懸命、輸出を試みたのは、高度経済成長期の日本がいまだ貧しくて、国内市場があまり大きくなかったからです。特に自動車や製造機械のような高額な製品は、海外に輸出しなければ売上を伸ばすことができませんでした。

 

ところが、その後、日本は豊かになったので、多くの企業は国内市場だけでも十分に売上を上げることができるようになりました。貿易摩擦が政治問題になり、1980年代に内需拡大が叫ばれた結果、日本企業の多くが内向きになってしまいました。

 

その当時はまだ日本経済が好調でしたから、それでもよかったかもしれません。しかし、90年代のバブル景気の崩壊と、失われた20年を経て、日本は再び海外に目を向けなければならない時代に来ています。

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