前回は、世界市場を席巻した日本発の「グローバル製品」の具体例について取り上げました。今回は、海外進出の武器にしたい「技術的なアドバンテージ」について見ていきます。

世界シェアの8割を握るオートバイ用の高級ヘルメット

オリジナルの発明品であれば世界中で売れるとはいっても、国内および海外で広く受け入れられるような製品を一から開発するのは困難です。できれば、すでに日本国内で販売している製品を、海外に持っていって売りたいものです。

 

しかし、たいていの製品は海外にも同じようなものがあるでしょうから、あらためて海外市場に食い込むのは難しいのではないかと多くの人は考えがちですが、実は、意外とそうでもありません。

 

というのも、たとえ海外に同じような製品・サービスがあったとしても、日本のように高品質のものは少ないからです。商品の品質が高いため、海外進出をしても十分に勝負になる日本企業も多くあります。

 

たとえば、オートバイ用のプレミアムヘルメットは、日本企業が世界シェアの8割を握る、日本の独壇場となっています。プレミアムヘルメットとは、高い安全性と機能性を持つ、高価格帯のヘルメットのことです。

 

転倒時には命を失う危険性もあるオートバイにおいて、ヘルメットの価値は非常に高いのです。世界シェアの5割以上を占めるSHOEIのヘルメットは、徹底的に安全性に配慮したつくりで、アマチュアからプロまで世界中のライダーの信頼を得ています。

 

SHOEIに続いて世界シェアの3割を握るアライヘルメットのプレミアムヘルメットは、シェルに軍需産業で使用されるスーパーファイバーを用いていて、転倒しても頭にダメージが残らないようにしているそうです。

マイクロ単位の精度を誇るYKKのファスナー

また、衣料用品に使われるファスナーは、そのスムーズな噛み合わせにマイクロ単位の精度が要求されるため、日本企業のYKKが世界シェアの約半分を独占しています。

 

ファスナー自体を発明したのはアメリカですが、当初は操作性が悪く、すぐに壊れてしまうため、あまり普及しませんでした。そのファスナーに改良を加えて、使いやすく進化させたのが日本のYKKです。

 

YKKのファスニング事業の売上のうち8割以上が海外でのもので、ルイ・ヴィトン、GAP、アディダス、ナイキといった海外の有名ブランドが、YKKのファスナーを使用しています。その理由は一にも二にも、他では代替の利かない、YKKの技術力にあります。

 

日本企業の製品やサービスのすべてが、高品質であり、海外企業に対して競争力の優位性を持つと主張したいわけではありません。しかし、日本企業のものづくりの技術が、いまのところ、全般的に他国よりも進んでいることはたしかです。

NASAの注文を受ける墨田区の町工場、岡野工業

たとえば、東京都墨田区にある従業員10名以下の町工場・岡野工業は、その高い技術力で先端の直径が0.2ミリメートルの注射針を開発し、「刺しても痛くない注射針」として、世界中に輸出しています。そのプレス加工の腕前が認められて、アメリカのNASAからも仕事の依頼が来たそうです。

 

また、新潟県新潟市の小林研業も、やはり従業員10名以下の町工場ですが、1000分の1ミリメートルの精度の研磨技術が認められて、アップル社のiPodの裏面を鏡のように磨く仕事を請け負いました。iPodについては、新潟県の研磨業者十数社が裏面の鏡面加工を請け負って、小林研業も4年間で250万個以上を手掛けたそうです。

 

新興国の追い上げもありますが、現在のところ、日本に技術的なアドバンテージがあることはたしかです。だからといって傲慢になってはなりませんが、謙虚になりすぎる必要もありません。この技術力を活かして海外進出するのであれば、優位性のあるいまのうちがチャンスです。

国内頭打ち商品で利益を生み出す 海外進出戦略

国内頭打ち商品で利益を生み出す 海外進出戦略

田中 義徳

幻冬舎メディアコンサルティング

国内では売上・利益ともに頭打ちで生き残りが厳しく、海外進出を試みても撤退を余儀なくされる――中小企業はどこに活路を見出せばいいのでしょうか。 海外のマーケットでは、日本国内と同様のマーケティング、営業手法で成果…

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