事業承継の手段としてM&A(第三者への会社売却)を選択する場合、売却決定という判断はいつ下せばよいのでしょうか。基本となる考え方を見ていきます。

M&Aなら自社株式の価値を高める経営戦略が必要

一般的に、会社のオーナー経営者は、いつまでも現場で働きたいと考える傾向にあります。元気なオーナー経営者ほど、引退の時期が見えなくなり、事業承継対策の開始が遅くなってしまいます。その結果、筆者のお客様ですと、例えば、85歳になって相続税評価額30億円の自社株式を100%所有している状態で筆者のもとにご相談に来られる方がいます。こうなってしまっては手遅れであり、もはや中小企業経営承継円滑化法の納税猶予制度の適用を考えなければならない状態です(次回以降の記事でご説明します)。


会社の親族内承継を行うのであれば、相続税負担を軽減するために、自社株式の相続税評価を引下げる自社株対策が必要です。これに対して、M&A(第三者への会社売却)を行うのであれば、売却価格を高くするために、自社株式の価値を高める経営戦略が必要となります。


いずれにしても、早い段階で事業承継に関する基本的な方針を固め、その方向に適合した事業承継対策を講じなければなりません。事業承継の方向性は早い段階で決めておかなければ、その対策が実行できなくなります。

売却のタイミングを逸すれば最悪の事態も

一般的に、業績好調の時期には、会社経営が楽しいため、オーナー経営者は、会社経営を長く続けたいと考えます。そのため、後継者がいない場合であっても、M&Aを決断できるオーナー経営者はほとんどいません。この結果、M&Aに最適なタイミングを逃してしまうケースが多く見られます。M&Aの実行が遅くなった場合、業績が悪化してから手続きを開始することになりますが、その時期には事業価値は低下し、株価はゼロになるか、誰も買ってくれなくなります。こうなってしまえば、会社を引き継ぐ後継者が誰もいなくなり、オーナー経営者は引退できなくなり、廃業という選択肢を採らざるを得なくなるのです。


後継者がいないオーナー経営者の利益を最大化するということは、会社を高く売るということです。この観点からは、業績が悪化したときのM&Aは極めて不利になります。債務超過に陥ってしまうと、利益どころかオーナー経営者個人にも損失が発生します。


会社売却できなければ廃業せざるをえません。しかし、廃業には多くの問題が伴います。廃業の一番大きな問題は、従業員が失業することでしょう。また、得意先に対して製品・商品やサービスを販売できなくなり、顧客に迷惑をかけることにもなります。さらに、廃業する際に会社を清算することになれば、返済できない銀行借入金をオーナー経営者の個人財産から弁済することになり、場合によっては追加の処分費用が必要となります。


売却のタイミングを見失うことによって廃業するという最悪の事態に陥らないようにするために、後継者のいない会社のオーナー経営者は、業績好調である早い段階において、M&A(第三者への会社売却)という意思決定を行わなければならないのです。

 

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