米国「ウォルマート」の事例にみる企業の立地戦略

今回は、ウォルマートの事例から、企業の立地戦略について見ていきます。※本連載では、マーケティングによる顧客理解において「地理的視点」が重要になっていることを、「ジオマーケティング」という欧米発の消費者分析手法のご紹介とともにお伝えします。

地方から大都市へと展開を始めた「ウォルマート」

どの立地で店舗を展開するか? 立地はビジネスモデルそのものだ。ブランドの成長と立地戦略は切り離すことはできない。アメリカの地域分析専門家向けの雑誌「プロフェッショナルジオグラファー」にウォルマート、Kマート、ターゲットの3ブランドのスーパーセンター業態拡大と立地戦略について興味深い論文が紹介されている(Thomas O. Graff, “Unequal Competition Among Chains of Supercenters: Kmart, Target, and Wal-Mart”, The Professional Geographer 58(1) 2006, pp. 54–64 )。

 

世界最大の小売業として知られるウォルマートは、もともとは、田舎のディスカウンターとして成長してきた。そのウォルマートが2000年以降スーパーセンター業態でこれまで攻めてこなかった大都市への進出を加速させている。ディスカウント業態と食料品スーパーが融合したスーパーセンターフォーマットの店舗網拡大は1990年代から始まり、ウォルマートは自身が得意な人口密度の低い田舎立地や郊外立地を中心にスーパーセンターを展開してきた。ディスカウント業態にとって食品売り場のあるスーパーセンターは店舗戦略上重要な業態である。ウォルマートが展開する田舎立地、郊外立地には所得の低い価格に敏感な勤労世帯が多く住む。

大都市を中心に展開してきた「ターゲット」社と対決

ウォルマートの都市部への進出は、都市近郊の中流層を顧客としてきたディスカウントストアーチェーン「ターゲット」と、正面から対決することを意味する。これまで、「ウォルマートは地方と郊外」「ターゲットは都市部」とすみ分けられてきたその構造が、大きく変化し始めているのだ。

 

田舎のウォルマートと都市のターゲット、どちらも1962年に最初のディスカウントストアーをオープンした。ターゲットは、商業都市ミネアポリスの郊外に一号店をオープンさせた。同社は百貨店のディスカウント業態として、デンバー(コロラド州)、セントルイス(ミズーリ州)など大都市を中心に店舗展開してきたため、ウォルマートと直接対峙することはなかった。

 

対するウォルマートは、当初から人口の少ない田舎立地を中心に店舗を展開した。ウォルマートの出店立地は、人口密度が低く市場規模が小さいため競合他社が進出することができず、いわば独占的な市場を形成しながら店舗網を拡大していった。そして、店舗網の拡大に伴い大量仕入れが可能となり、低価格でも高い利益率を維持することができる仕組みが構築された。

ジオマーケティング株式会社 代表取締役
技術士(環境部門)・測量士

1965年生まれ。ジオマーケティング株式会社代表取締役。日本大学文理学部地理学科卒業。技術士(環境部門)・測量士。
専門は地域分析。都市・環境・防災計画のための基礎調査をする会社を設立し、キャリアをスタート。その後大手ベンチャーキャピタルより出資を受け、携帯電話向けナビゲーションシステムを開発。2004年に、英国のコンサルティングファームGMAP の上席コンサルタントとしてアジア太平洋地域の小売り立地分析、売り上げ予測業務に従事。2011年には日本GMAP代表取締役。2015年に日本GMAP の国内部門をMBOし、ジオマーケティング株式会社を設立。現在に至る。

著者紹介

連載ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

ジオマーケティング戦略 ポスト「マス」時代の消費者分析

酒井 嘉昭

幻冬舎メディアコンサルティング

「ところ変われば、(売れる)品も変わる」――。現代において「流行」とは、企業がつくり出すものではない。様々な情報へ日常的に触れる消費者に「選ばれて」初めて、流行の商品・サービスとして流通する。ビッグデータ全盛の…

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