自分のビルの立ち位置を知るための「募集条件比較表」の活用法

前回までは、市場での自ビルの立ち位置を知るために、競合物件を見つけ、比較する方法について解説してきました。今回は、さらに具体的な比較の進め方として「募集条件比較表」の活用法について見ていきます。

ビルごとの改善・修繕箇所を洗い出し徹底的に比較する

ここまでの連載で、市場のなかでの自分のビルの立ち位置を知るための方法を述べてきましたが、筆者の会社では最終的な順位づけに下記の「募集条件比較表」を使います。

 

これは当社が独自に作っているもので、物件名から始まり、収集した情報を細かく記載、順位をつける作業を行うのです。これは新規にビルのテナント募集をするときに使っているもので、当社ではどのテナント募集の際にもここまで説明してきたのと同様のやり方で競合物件をピックアップ、徹底的に比較を行っています。

 

通常は、この一覧表で比較した結果、順位を少しでも上げ、賃料をアップさせるには「何をどうすればいいか?」をオーナーに提案するため、ビルごとの改善・修繕箇所を洗い出します。言い換えればそのような改善策もこの表があるからこそ、導き出されるのです。以降、この表で比較する項目、内容を解説します。ご覧のとおり、非常に多項目にわたる表ですが、面倒がらず、記載していきましょう。

収集した情報は細かく記載し順位づけする

さて、一覧表に情報を書き込み始める前に、競合する物件をすべて落とし込める縮尺の地図、できれば航空地図を用意して、競合物件の位置を地図上に記載する作業をしましょう。20物件以上を比較するとなると、位置がわからなくなることもありますし、同じような条件なら立地で順位を決めるという場合にはひと目で位置がわかる地図を作っておくと便利だからです。

 

では、当社で作っている募集条件比較表にしたがって各項目を説明しましょう。必ず記載することになるのは順位です。当然ながら、自ビルと競合物件の順位で、自分のビルを上位に書きたくなってもそこは我慢。連載第1回でご紹介した物件評価書による採点結果に基づき、冷静に順位をつけます。順位は実際の情報を書き込んでいるうちに変わってくることもありますから、決めつけは禁物。最終的な調整も必要となります。

 

物件名も記載します。同じオーナーが特定のエリアに複数のビルを持っている場合には、その点を気にしておくことも必要です。なぜならそのようなオーナーは、空室が多い場合には、1棟しか所有していないオーナーよりも賃料設定を下げる可能性が高いなどといった事情があるためです。たいていの場合、○○第一ビル、○○第二ビル、あるいは田町△△ビル、浜松町△△ビルなど、物件名から容易に推察できるはずです。

 

立地に関してはまず最寄り駅、駅からの所要時間を書きますが、ここでは実際に歩いてみての所要時間を入れておきましょう。というのは、途中に大きな交差点や歩道橋があるなど、広告に記載されているよりも時間がかかる場合もあるからです。同様に、駅からビルまでの間の雰囲気、ビル周辺の建物の状況など、見てきたからわかる情報も入れておくとなおよいでしょう。前面道路が一方通行で狭いなどといった道路事情も大きな情報です。

物件広告に記載されていないマイナス情報も確認する

募集しているオフィスの階数、面積(坪)、ビルの竣工年月日、入居可能日、保証金、賃料、管理費(坪当たり価格)、更新料や償却費などについては物件広告から転載します。設備についても記載されているものについては転載。ただし、貸す側にとって有利な情報である設備情報は記載されていますが、新耐震基準以前の建物であるなど、マイナス情報は記載されていませんから、個別に確認する作業が必要になります。

 

設備について調べておきたい項目は二重床の有無、新耐震基準以降の建物であるかどうか、警備体制、空調の有無と設備の内容の4点。ご存じとは思いますが、新耐震基準とは昭和53(1978)年に起きた宮城県沖地震での甚大な建物被害を受けて大きく見直された現行の建築基準法施行令に基づくもので、昭和56(1981)年6月1日に改正された基準です。この日以降、建築確認申請がなされたものについては、新耐震基準が適用されていると判断することができます。

 

ただし、実際の物件広告では竣工日はわかっても、建築確認申請日まではわかりませんから、微妙な時期の竣工であれば、実際に問い合わせてみるなど確認する必要があります。また、新耐震基準以前の建物でも基準を満たしている建物もあります。最近は防災意識の高まりもあり、耐震基準を満たしているかどうかを気にする企業が増えており、新耐震基準以前の建物であるとわかっているビルに入りたがる企業はないといってもよいほどで、注意が必要です。

 

ここまでは、オーナー自身で何とか記入できる項目ですが、次回から挙げる内容にはオーナー自身ではどうにも調べられないことも出てきます。一番は当社(サブリース)にご相談いただくのがよいかとは思いますが、現在付き合いのある仲介会社などをうまく活用し、表を完成させてみてください。

本連載は、2010年12月21日刊行の書籍『空室を抱える中小オフィスビルオーナーのための満室ビル経営』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載中小オフィスビルオーナーのための「満室」経営術

サブリース株式会社 代表取締役

1946年岩手県宮古市生まれ。1969年に都留文科大学を中退、東都商事株式会社に入社。貸事務所仲介営業に従事し、入社から5カ月で営業管理職兼トップ営業マンと して活躍する。その後、同社を3年10カ月で退社、26歳 で独立を果たす。40年以上にも及ぶ業界経験のなかで、 貸事務所の仲介のみならず、貸ビルの設計・開発ならびに リフォームを含めたビルのコンサルティングも手掛け、多く の空室に悩むオフィスビルを再生させてきた。また、業界に先駆け、貸事務所の転貸業(サブリース)を考案するな ど、その豊富な経験を活かし、現在はサブリース株式会社 にて、オフィスビルの設計、開発、再生に力を注いでいる。

著者紹介

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

空室を抱える 中小オフィスビルオーナーのための 満室ビル経営

佐々木 泰樹

幻冬舎メディアコンサルティング

サブプライム問題、リーマンショックを経て、悪化した賃貸オフィスビル市場は依然厳しく、地方都市では都心以上に苦しい状況にあります。そのような中、特に中小規模のオフィスビルは、バブル期以前に建った築20年以上のビルが…

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