今回は、資源・エネルギー価格の暴落で苦戦する「投機マネー」の現状を見ていきます。※本連載は、銀行、証券、保険など金融機関を中心に30年以上の豊富な取材経験をもち、現在も各種媒体で健筆をふるうジャーナリスト・齋藤裕氏の著書、『金融業界大研究』(産学社)の中から一部を抜粋し、銀行、証券、生命保険、損害保険各業界の最前線を徹底レポートします。

資源価格の暴落などで「リスク回避」に走る投機マネー

前回紹介したような投資・投機マネーも、資源・エネルギー価格の暴落や、金融規制により金融機関からの資金調達が厳しくなってきたことでビジネスの見直しを行なっている。

 

2015年春。「日本での新しい投資先が見つからない」と、日本からの撤退が囁かれたのが米投資ファンドのサーベラス。西武ホールディングス株の発行済み株式総数の約10%を売却したことが原因だが、その後、東京の陣容を大幅に縮小させた。

 

かといって、他国でのビジネスは持続している。2016年4月、日本の農林中央金庫がサーベラス・キャピタル・マネジメントが発行した英モーゲージ担保証券(MBS)のうち、20億ポンド(約3150億円)を購入したと報道された。

 

このMBSは、同社が2015年に買収した英金融機関ノーザン・ロックのモーゲージを裏付けとしている。

 

日本国債がマイナス利回りで投資妙味が薄れているため、国内投資家は債券から海外のリスク資産へと投資先をシフトせざるを得ず、ファンドサイドにしてみれば資金調達の新ルートになったわけだ。

 

また、KKRは日本での上場企業投資を始めたようだ。投資先の経営陣と連携して経営改革を支援し、中長期の株価上昇で収益を得る。複数の上場株に投資し、取得額は合計で1000億円規模と見られている。非上場企業への投資で経営権を取得するこれまでの買収戦略と合わせ、日本での収益源を多様化する計画だ。

 

金融規制の影響もあり、世界のグローバルな投資資金は「リスク回避」に走り、中東の優等生だったSAMA(サウジアラビア通貨庁)が資金を回収している結果、対外純資産はピーク比1割以上も減少している。

海外ファンド管理残高を拡大する三菱UFJ信託銀行

こうした中、三菱UFJ信託銀行がファンドビジネスを強化している。同行は、海外ファンドの管理残高を2017年度末までに現在の約36兆円から50兆円規模にする計画を打ち出している。

 

同社はヘッジフアンド向け資産管理で世界シェア7位。買収戦略を加速し、フルラインでの提供でトップ5を目指す考えだ。

 

国内で培ったノウハウを生かしながら、重要戦略分野の資産管理業務を三菱UFJフィナンシャル・グループの収益の柱に育てる。ファンド資産管理業務は運用資産の価格を算出したり、投資家向け報告書を作成したりする。残高に比例した安定した手数料収入が見込める。

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