「再編・統合ラッシュ」で大きな転機を迎える金融界

今回は、「再編・統合ラッシュ」で大きな転機を迎える金融界の現況を見ていきます。※本連載は、銀行、証券、保険など金融機関を中心に30年以上の豊富な取材経験をもち、現在も各種媒体で健筆をふるうジャーナリスト・齋藤裕氏の著書、『金融業界大研究』(産学社)の中から一部を抜粋し、銀行、証券、生命保険、損害保険各業界の最前線を徹底レポートします。

日本・中国経済の停滞で、更なる合従連衡の可能性も

日本の金融界は、銀行、証券会社、生命保険会社、損害保険会社がそれぞれの分野で企業、個人への金融サービスを提供している。そして、その周辺に信用金庫、信用組合といった地域金融機関やリース、消費者金融といったノンバンクが存在して金融機能を補完している。

 

銀行業界は、2000年のみずほグループ発足に刺激され、それ以降の10年間で起きた金融大再編で合従連衡が行なわれたが、結局は①みずほグループ、②三井住友グループ、③三菱UFJグループの3大メガバンクにプラスした④りそなグループ、⑤三井住友トラストグループの5グループに集約された。

 

ライバル行同士が寄り添い、それに負けじと連鎖的に起こった合従連衡は仁義なき戦いの幕開けでもあった。

 

この合従連衡は証券、保険、リースといった金融関連業種をグループ内に取り込み、金融周辺ビジネスでの収益をグループ収益としてかさ上げする〝総合金融路線〟をも確立させた。この総合金融路線だが、米国を中心に日本を除いたグローバルマーケットでは修正が行なわれようとしているが、日本のメガバンクはむしろ強化しようとしている。

 

ここ数年、メガバンククラスの再編・統合は鳴りを潜めている。直近の主な動きとしては、みずほグループのグループ内再編がある。

 

メガバンクの一つのみずほグループは、旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の合併によるグループ発足当時からリテール銀行(みずほ銀行)とホールセール銀行(みずほコーポレート銀行)の「ツー(2)バンク」制を採用してきた。

 

しかし、人事面などを含めてその弊害が以前から囁かれてきたが、2011年3月に起きたシステム障害を受けて抜本的な組織改革が必要とされ、2013年7月にみずほコーポレート銀行とみずほ銀行を統合し「ワンバンク」として再出発した。

 

この3メガバンク体制は当分続きそうというのが、一般的な見方だ。だが、必ずしもそうではない。更なる合従連衡の芽が吹き出している。ここに来て環境は劇的に悪化しているからだ。

 

マイナス金利が象徴するように、国内の停滞はかなり長引きそうで、加えて、中国経済の行方にも暗雲が漂っている。これまでのように安易に海外で稼ぐことも期待できそうにない。

 

そうなると、数年後には大手銀行間にまた合従連衡の動きが出る可能性もある。その際、3メガバンク制が違う形になるのか、あるいは地域連合を目指すりそなグループが、他の地域連合を吸収してメガバンクに仲間入りするのか、または、今の3メガバンクのいずれかに吸収されるといった様な動きが起きる可能性は高い。

「地銀業界」に求められる新たな経営手法

地方銀行、信用金庫、信用組合といった地域金融機関は今後ともダイナミックに再編が起きる可能性は高い。既に金融庁のシナリオに突き動かされたように、第2の再編ラッシュが起きている。

 

2016年4月1日には、①徳島銀行と香川銀行を傘下に置くトモニホールディングスと大正銀行が経営統合し、東部瀬戸内海圏をカバーする広域グループが発足、②東京TYフィナンシャルグループ(2014年に東京都民銀行と八千代銀行が統合して設立)が、東京都が80%超出資する新銀行東京と経営統合。

 

さらに、③地銀最大手の横浜銀行と東京を地盤とする東日本銀行が持株会社「めぶきファイナンシャルグループ」を設立し経営統合した。また、2017年10月には足利銀行と常陽銀行が一緒になることが発表された。

 

金融庁が、2016年9月に公表したレポートが地方銀行に大きなショックを与えた。約10年後に、全国の地方銀行の6割は、貸し金業務や投資信託の販売などの「本業」で赤字に転落するというものだった。

 

今後地方銀行は、人口減や日本銀行のマイナス金利政策により厳しい経営環境に置かれることは、自分たちも覚悟しているが、この金融庁レポートの背景に「経営統合を含めた経営手法を早期に見つけなさい」という再編の催促を感じ取ったからだ。

 

いま、地方銀行の経営は、本業の収益悪化を国債や株式の売却益などで補って利益を上げており、すぐには経営不安の心配はない。しかし、マイナス金利政策で貸出金利の低下は続いている。

 

金融庁としては、地元の中小企業への積極的な融資や経営支援を強化して、利ざやの低下を食い止めることを要請しているが簡単ではないことは金融庁も良く知っている。「結局は、どこかと一緒になる道を考えなさい」という催促だと地銀業界では見ている。

 

証券界では、共同出資で法人向けにビジネスを展開するホールセール(法人向け)証券を設立して10年間資本提携を行なっていた三井住友、大和証券両グループが決別。三井住友グループは、シティグループから日興コーディアル証券を買収し「SMBC日興証券」として新しくグループ傘下にした。

 

大和証券グループは、再び純粋な〝独立証券〟になったが、今後は内外含めての金融機関との連携も起きそうで証券再編の呼び水になりそうだ。

 

また、みずほグループはグループ内証券統合を行なうことで証券戦略を強化している。3メガバンクの覇権競争が、野村、大和グループといった証券業界1,2位の独立系証券を巻き込んでの統合劇に繋がることも充分にあり得る。

ジャーナリスト

1947年、福島県生まれ。金融・経済専門情報誌の編集長を経て、1999年に独立。現在は、フリーランスとして執筆・評論を行っている。銀行、証券、保険など金融機関を中心に30年以上にわたる豊富な取材活動を基に『中央公論』(中央公論新社)、『エコノミスト』(毎日新聞社)などで健筆をふるう。
主な著書に『大合併時代の金融業界再編成』(東洋経済新報社)、『銀行が2分の1消える日』(中経出版)、『証券はどうなる』(ダイヤモンド社)、『投資銀行業界大研究』『産業と会社研究シリーズ 銀行』(共に産学社)など多数。

著者紹介

連載ますます混沌としてきた「金融業界」――その最新動向を探る

金融業界大研究

金融業界大研究

齋藤 裕

産学社

ますます混沌としてきた世界経済の中で国内の金融業界各社の経営戦略はどうなっていくのか? 銀行、証券、生命保険、損害保険各業界の最前線と各社情報を徹底レポート! 基礎知識から最新動向まで業界研究に最適! 金融業界…

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