「英国のEU離脱決定」によって国際金融市場が受けた影響

今回は、「英国のEU離脱決定」を受けて、金融市場がどのような反応をしたのか見ていきます。※本連載は、銀行、証券、保険など金融機関を中心に30年以上の豊富な取材経験をもち、現在も各種媒体で健筆をふるうジャーナリスト・齋藤裕氏の著書、『金融業界大研究』(産学社)の中から一部を抜粋し、銀行、証券、生命保険、損害保険各業界の最前線を徹底レポートします。

1日にして「約3.3兆ドル」の株式時価総額が消失

この複雑かつ混沌とした世界をさらに揺るがしているのが英国の「EU離脱」騒動。今後、英国の離脱がEU連合、延いては国際経済にどのような影響を与えるかを知るには時間が必要だが、中国の欧州政策にも影響を与えるのは確実で、今後の動向が注目される。

 

2016年6月24日、前日の英国のEU離脱が決まったことを受けて世界の株式市場が震撼し、1日だけで約3.3兆ドル(330兆円強)の時価総額が消失した。

 

翌日以降、株式市場は持ち直したが、今回の出来事は、世界的な金融システム不安を引き起こした2008年の金融危機とは異なる。

 

米国発の金融危機では、金融機関が世界通貨であるドルの調達が困難になったが、今回懸念されるのは、第2、第3の英国が出現し、それぞれが英国同様に「保護主義」政策を強化することで、世界経済の成長鈍化に繋がるのでは、ということだ。

英国に拠点を置く金融機関は戦略の見直しが必要に

一方で、今回、銀行株の下落が大きかった。その要因は2つあった。1つは、世界経済がさらに収縮する結果、一段と金融緩和が進み、銀行収益を圧迫する懸念があること。

 

また、欧州ビジネスの本拠地をロンドンに置いている金融機関は戦略見直しが必要になっている。英国のEU離脱で大きな問題になるのが、単一の免許でEU域内での営業が出来る「パスポート制度」。

 

これまで、多くの日本の金融機関の欧州ビジネスは英国に現地法人を設立して本拠地とし、英当局の認可(免許取得)を受ければパリ、ミラノなどに店舗を出すことができた。しかし、今後この制度を利用できなくなる可能性がある。そうなれば、英国以外のEU諸国に現地法人を作る必要が生じる。

 

また、保険業界は欧州事業の統括拠点である英国法人が保険のライセンスを取得して、欧州全域で事業展開しているが、新たに欧州大陸側でライセンスを取得する必要がでてきそうだ。当然、こうした組織再編に絡んで人員の移動も必要になり、コストアップ要因になる。

ジャーナリスト

1947年、福島県生まれ。金融・経済専門情報誌の編集長を経て、1999年に独立。現在は、フリーランスとして執筆・評論を行っている。銀行、証券、保険など金融機関を中心に30年以上にわたる豊富な取材活動を基に『中央公論』(中央公論新社)、『エコノミスト』(毎日新聞社)などで健筆をふるう。
主な著書に『大合併時代の金融業界再編成』(東洋経済新報社)、『銀行が2分の1消える日』(中経出版)、『証券はどうなる』(ダイヤモンド社)、『投資銀行業界大研究』『産業と会社研究シリーズ 銀行』(共に産学社)など多数。

著者紹介

連載ますます混沌としてきた「金融業界」――その最新動向を探る

金融業界大研究

金融業界大研究

齋藤 裕

産学社

ますます混沌としてきた世界経済の中で国内の金融業界各社の経営戦略はどうなっていくのか? 銀行、証券、生命保険、損害保険各業界の最前線と各社情報を徹底レポート! 基礎知識から最新動向まで業界研究に最適! 金融業界…

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