前回は、考える力をつけさせる、家庭での「思考教育」実践方法を取り上げました。今回は、親の意識で変わる子どもの可能性について見ていきます。

訓練の末、メジャーでもトップ選手となったイチロー

あなたは、自分の子どもをどのように評価しているでしょうか。

 

学校の勉強はできるけれども、塾での成績が今ひとつ、このままでは受験が心配?

もっとできるはずなんだけれど、どうも成績が伸びない。もっと家で勉強させた方がよいのでは?

塾でもトップクラスに入っているから、ここで油断しないようにすれば志望校に合格できそう?

 

注意していただきたいのは、これらはいずれも現時点での判断だということ。子どもの将来性については、どのようにお考えでしょうか。子どもが秘めている可能性、その伸びしろのすごさについて考える時、私はいつもメジャーリーガーのイチロー選手を思い出します。

 

鈴木一朗ことイチロー少年は、幼い頃からバッティングセンターに毎日のように通って練習を積み重ねた結果、大リーグのトップ選手にまで上り詰めました。イチロー少年は、運動神経や動体視力などは人並み外れて優れていたようですが、体格的にはそれほど恵まれていたわけではありません。同じ日本人大リーガーだった野茂英雄選手や佐々木主浩選手らと比べれば、ずいぶんと線が細い印象を受けます。

 

実際、アメリカ人のメジャーリーガーの中に入れば、ひときわ小柄で細身に見えます。にも関わらず、首位打者を取り、シーズン最多安打を記録するなど、その活躍ぶりはアメリカ人メジャーリーガーに、まったく引けを取りません。

 

なぜ、そんなことができたのか。ひとえに彼が訓練を積み重ねてきたからでしょう。もちろん、幼い頃からイチロー少年と同じ練習を続けていれば、誰もが大リーガーになれる、というわけではありません。おそらく大リーガーになるためには、ごく限られた人にしか与えられない天賦の才能が必要なのでしょう。けれども、子どもの伸びしろは無限だと思います。それを誰よりも信じてあげるべきは、親です。

頭を使う訓練を続けていれば、頭は柔らかくなる

イチロー二世になることを思えば、東京大学に入ることの方が、よほど簡単で現実的です。毎年約3000人が入学できるのですから、頭をしっかり使うよう訓練し、頭が柔らかくなりさえすれば、合格の可能性はぐっと高くなります。

 

しかも、頭を柔らかくするのは、柔軟体操をして体を柔らかくするのと同じです。どちらも続けていれば、誰でもある程度は必ず柔らかくなります。仮に今は体が硬くて、柔軟体操をしても体がうまく曲がらない子どもがいたとしましょう。そんな子どもでも、毎日5分、テレビを見ながらでいいから体をほぐしていれば、いずれ必ず体は柔らかくなります。

 

頭の訓練もこれと同じことです。生まれつき体の硬い子、柔らかい子がいるのと同じで、頭の固い子と柔らかな子がいます。そして柔軟体操を続けていれば体が柔らかくなるように、頭を使う訓練を続けていれば、頭は柔らかくなります。

 

ただ、体を柔らかくする練習は、テレビを見ながらでもできるけれども、頭を柔らかくする訓練は、そう簡単にはいきません。慣れるまで、その訓練はきっと退屈で苦しいことでしょう。最初はわずか5分でさえ、考え続けることのできない子どもがほとんどです。じっくりと考える習慣のなかった子どもに、例えば算数の難問を考えさせるのは、ある種の苦行といえます。

 

けれども、その時点で子どもに能力差はほとんどありません。仮に幼い頃からそろばん塾や計算教室に通っていた子どもなら、学校のドリルや練習問題は早く正確にできるでしょう。ところが、そんな子どもたちに難しい算数の問題を与えてみると、すぐにお手上げとなります。むしろ自慢の計算力では歯が立たないとわかった瞬間に、それ以上考え続けることを放棄しがちです。

 

だからといって、彼らに可能性がない、などということはまったくありません。要するにみんな、これまで頭をしっかり使って考える経験をしたことがないだけなのです。

東大・京大に合格する 子どもの育て方

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江藤 宏

幻冬舎メディアコンサルティング

「うちの子は勉強しているのに成績が上がらない」、「あの子は勉強しているように見えないのにいつも成績がいい」と感じたことはありませんか? 実はわかりやすい授業ほど、子どもの可能性を奪っているとしたら──。 40年に…

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