今回は、役員への支給額が「損金不算入」となる事態を避ける方法を見ていきます。※本連載では、税務調査の現場実務に精通し、国際税務コンサルタント事務所の所長として活躍する渡邊崇甫氏の著書、『業種別 税務調査のポイントー国税調査官の視点とアドバイスー』(新日本法規出版)より一部を抜粋し、税務調査の基礎知識や税務処理で誤りやすいポイントなどを解説します。

業績向上への貢献を評価した「賞与の増額」に注意

前回の続きです。本事例は、役員甲の任期期間中においてX年度(∼X+1年3月31日)及びX+1年度(X+1年4月1日∼)の二の事業年度にわたり支給された2回の賞与のうち、先行するX年度の支給額を50万円増額していたことから、当該任期期間中の2回の賞与の支給はX+1年度における支給分も含め、いずれも「事前確定届出給与」に該当しないとみなされ、その全額の損金算入が否認されたものです。

 

本事例では、この50万円の増額支給につき、臨時株主総会を開催し当該増額分を決議しており、しかるべき手続を経て支給されています。

 

しかしながら、税務上は、一旦「事前確定届出給与に関する届出書」を提出した役員給与につき、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を所定の期限内に提出することをもってその支給額の変更を申し出ることができるものの、①臨時改定事由(役員の職制上の地位の変更等)、②業績悪化改定事由(経営状況の著しい悪化等)に該当しない限り支給額の変更は認められないこととなっていますので(法令69④)、本事例のような業績の向上への貢献度を評価したことに起因する賞与の増額は、変更が許されるこれらの要件には該当しません。

「損金算入」は2つの条件を満たして初めて認められる

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事前確定届出給与は、①所轄税務署長に所定の届出書を提出し、②実際にその届出どおりに支給した場合に初めて損金算入が認められる制度です。これらの2つの要件を満たしていなければその役員に対する支給額の全額が損金不算入となるので注意が必要です。

 

なお、事前確定届出給与が未払となっている場合は、それのみをもって損金算入を否認されるものではありません。当該役員に対する債務としての実態が備わっていれば許容されるものと考えられます。

業種別 税務調査のポイント ー国税調査官の視点とアドバイスー

業種別 税務調査のポイント ー国税調査官の視点とアドバイスー

渡邊 崇甫

新日本法規出版

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