退職した社員に「賞与の未払」がある場合の留意点

今回は、退職した社員に「賞与の未払」がある場合の留意点を紹介します。※本連載では、税務調査の現場実務に精通し、国際税務コンサルタント事務所の所長として活躍する渡邊崇甫氏の著書、『業種別 税務調査のポイントー国税調査官の視点とアドバイスー』(新日本法規出版)より一部を抜粋し、税務調査の基礎知識や税務処理で誤りやすいポイントなどを解説します。

通知日から支給日の間に社員が退職…損金不算入に

<事例>

 

A社は、当期の業績が好調であったため、期末に使用人に対する未払賞与を計上しました。期末までに全使用人に通知し、翌期開始から1か月以内に支払っており、損金算入の要件は満たしていると判断しています。

 

<調査官の着眼点・発想>

 

「未払賞与」については、①期中に「通知」をしており、②翌期開始後1か月以内に、③「通知」どおりの金額が支給されているかどうかがポイントとなる。

 

<結果>

 

通知日から支給日までの間に退職したことにより賞与が支払われていない使用人がいるため、「未払賞与の計上額」と「実際に支給した金額」が一致していない。この場合、未払賞与の損金性が否認されることとなるため、その全額が損金の額に算入できない。

「通知どおりの金額」が支給されているかが重要に

【調査官が確認した事実及び判断】

 

<確認した事実>

 

調査官は以下の事実を確認した。

 

①未払賞与の計上

 

(借方)賞与1,200万円 (貸方)未払金1,200万円

 

②未払賞与に関する事実関係

 

㋐期末の臨時賞与であり、労働協約や就業規則において支給日等は定められていない。

 

㋑期末までに全使用人に対し通知がなされている。

 

㋒賞与の支給は翌期開始後1か月以内になされている。

 

㋓翌期における賞与の支給に関する仕訳及び支給明細は以下のとおりであった(源泉所得税に係る預り金の計上は設定の単純化のため省略している。)。

 

 

[図表]支給明細書

 

営業社員eについては、支給日までに退職したことにより賞与の受給資格を喪失しているため、賞与は支給していないとのことであった。

 

<課税関係に係る判断>

 

営業社員eにおける賞与の不支給理由で確認されたとおり、A社が計上した未払賞与は、支給日までの退職により受給資格を失うものである。

 

このような、支給日に在籍する使用人のみに賞与を支給することとしている場合におけるその支給額の通知は、未払賞与が損金算入されるための要件である「通知」には該当しない。したがって、未払賞与として計上した金額1,200万円はその全額が損金の額に算入されない。

 

 

この話は次回に続きます。

渡邊税理士事務所 所長

国税専門官として大阪国税局に採用され、主に大阪・東京国税局の調査部において大規模法人の税務調査に従事。特に国際取引、金融取引、企業再編成等を専門に調査する「国際調査課」等において最先端の税務執行現場に長く身を置く。国税庁長官表彰、国税局長表彰を受賞するなど調査現場実務に精通。また、国税不服審判所(本部)の審査官として各審判所における困難案件への助言業務にも従事。20余年勤務した国税局を2014年に退職。現在、神戸市にある国際税務コンサルタント事務所の所長として活躍中。
渡邊税理士事務所HP:http://www.tax-watanabe.net/

著書
「図解・詳解 組織再編税制」(清文社) 2015年7月


税務調査のポイントを解説するセミナーを東京と大阪で開催!
「元国税調査官から見た税務調査のポイント」セミナー

東京会場 https://www.sn-hoki.co.jp/shop/seminar/186.html?hb=1
大阪会場 https://www.sn-hoki.co.jp/shop/seminar/185.html?hb=1

著者紹介

連載税務調査のポイント――国税調査官の視点とアドバイス

業種別 税務調査のポイント ー国税調査官の視点とアドバイスー

業種別 税務調査のポイント ー国税調査官の視点とアドバイスー

渡邊 崇甫

新日本法規出版

これ一冊で、税務調査官の着眼点がわかる! ◆税務処理で誤りに陥りやすいポイントを業種別に明らかにし、税務調査での問題点を解説しています。 ◆是認・否認の判断について、「税務調査官ならでは」の視点で解説し、適切な…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧