前回は、ココナッツオイルやアマニ油などの「オイル」で、本当に腸の滑りは良くなるのかを検証しました。今回は、「腸内洗浄」が腸にもたらす悪影響を見ていきます。

がんこな便秘を解消する方法としてはアリだが・・・

慢性の便秘は、便が腸にたまることが原因なのだから、腸を洗って便を外に出してしまえば良い――そのような着想でここ数年、美容に関心の高い女性を中心に知名度を高めている腸内洗浄。別名、コロンクレンジングとも呼ばれています。

 

便秘と、それにともなう肥満や肌荒れ、その他の体調不良の改善効果もあるという触れ込みで、一部の美容クリニックなどで行われています。女性に支持されているのは、ハリウッドセレブにも人気などといったイメージ戦略も功を奏しているせいと思われます。

 

しかし、長年腸内の研究をしてきた者の立場から言わせていただくと、腸内洗浄の健康効果にはかなり首をかしげざるを得ません。腸をきれいにすることとそれによるメリットばかりが強調され、デメリットがまったく耳に入ってこないからです。

 

確かに、がんこな便秘で他に手立てがないような人が、便を出す目的で行うのならいいかもしれません。また、大腸の内視鏡検査前に腸内をきれいにするのは当然、必要なことですから異論はありません。

腸を洗えば、腸内細菌の生態系もこわしかねない

しかし、いくら慢性的な便秘だからといっても、主に美容目的で安易に受けていいものかは疑問が残ります。汚れを落とせばきれいになると、まるで顔や身体を洗うことと同列で腸内洗浄を捉えていないでしょうか。

 

今まで話してきたように、大腸の中では腸内細菌による発酵が常時行われており、様々な物質が生産されています。

 

腸を洗うということは、これらの細菌も生産物質も、ほとんどが外へ排出されてしまうことを意味します。つまり、それまでたえまなく続いていた発酵作業を止めてしまうばかりか、それを行っている腸内細菌の生態系もこわしかねない、ということなのです。

 

腸内洗浄で悪玉菌だけが洗い流されるのであればいいのですが、そういうわけにもいきません。健康に良い物質をつくり出していた善玉菌もともに洗い流されてしまうのです。

 

そうなると、腸内洗浄後に、腸壁にわずかに残った菌が、一から発酵作業のできる体制を整えなければなりません。その間、発酵によって身体が得られるはずだった、健康に良い物質の供給も滞りますし、免疫力も低下してしまうことが懸念されます。

 

なお、最近は自宅で腸内洗浄ができるキットや洗浄液が販売されているようですが、自己流で行うと腸の粘膜を傷つけるなどの事故の危険性を指摘する専門家の声が上がっています。また、洗浄液が医薬品であるにも関わらず無許可で販売したとして業者が逮捕されるといった事件も起こっています。

 

先ほども述べたように、酷い便秘で悩んでいる人が、解決策の一つとして検討するのであれば順当なのかもしれませんが、腸内を、洗うなどの外からの作用できれいにすることは、中の腸内細菌の存在を無視した行為になりがちなので、おすすめはできないというのが、私の意見です。

本連載は、2016年4月30日刊行の書籍『不老「腸」寿』から抜粋したものです。記載内容は予防医学の観点からの見解、研究の報告であり、治療法などの効能効果や安全性を保証するものではございません。

不老「腸」寿

不老「腸」寿

村田 公英

幻冬舎メディアコンサルティング

本書では、約50年の長きにわたり乳酸菌の研究を行ってきた著者が、本当に効果のある腸内改善のノウハウについて解説していきます。 「乳酸菌生産物質」を活用した腸内改善を行えば、100歳まで健康に長生きすることが可能にな…

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