今回は、「エジプト」の経済状況と今後の展望を紹介します。※本連載は、公認会計士・税理士で、久野康成公認会計士事務所所長、株式会社東京コンサルティングファーム代表取締役会長の久野康成氏が監修した『新興国ビジネス業界地図』(TCG出版)から一部を抜粋し、激変する新興国市場のうち、特に注目したい4カ国の現状と今後の動向予測を見ていきます。

事業コストが低く、マーケットとしての期待値は高い

<政治・経済動向>

 

●軍部出身のシーシ大統領誕生

ムスリム同胞団を支持基盤とするモルシ大統領が辞任し、暫定政権となっていたが、2014年5月の大統領選で軍部介入の主導者・シーシ前国防大臣が圧勝し、民主化より治安と経済の安定を優先すると表明。

 

●自由貿易協定

トルコ、チュニジア、モロッコなど主にイスラム教国と協定発効済。

 

 

<今後の展望>

 

●人口8,200万人の巨大マーケット

欧州、アラブ諸国、サブサハラ、アジアの結節点にある等、地理的条件、事業コストの低さなどが魅力。

 

●問われる新政権の手腕

政情不安の要因である貧富の差、高インフレ率、慢性的な財政赤字など課題が噴出した状態にある。同国の経済を支えてきた湾岸三カ国(サウジアラビア、UAE、クウェート)が、今後も経済支援をすると表明。

 

<人口>

 

●約8,600万人(2014年、エジプト中央動員統計局)

●近未来予測

2025年⇒約9,587万1,600人

2050年⇒約1億1,500万人

アフリカではナイジェリア、エチオピアに次いで人口の多い国。若年層が多く増加率も高い。首都カイロはエジプトのみならずアラブの経済・文化の中心として栄えてきた国際都市。都市圏域には1,500万人いるといわれる。

 

拡大した貧富の差は深刻…政治的混乱の懸念も

[図表1]実質GDPと1人当たり名目GDP

出所:IMF‘WorldEconomicOutlookDatabase,October2014’
出所:IMF‘WorldEconomicOutlookDatabase,October2014’

 

GDPは堅調に推移している。この背景には、21世紀に入ってからの経済改革の進展や原油高によるアラブ産油国の好景気の影響がある。一方で、拡大した貧富の差は深刻で、政治的混乱、不透明な社会情勢に繫がっている。

 

[図表2]エジプト国債(10年)の利回り

 

2013年7月、モルシ元大統領の国外追放を機に国債利回りが大幅に低下した。2013年は、一時過去最悪の数値を記録したがまもなく回復。しかし、2015年は政治・経済に対する不安定さから、2013年初期同様に利回りが上昇している。

 

[図表3]エジプト証券取引所株価の推移(EGX30)

 

2010年に比べて2015年の株価は1.5倍以上高い数値を記録した。しかし、この5年間に順調に推移したわけではない。毎年、株価の大幅な変動があり安定しない。この背景には、エジプトの政治情勢や治安の不安定さが関係している。

 

[図表4]為替レートの推移(エジプト・ポンド/円)

 

エジプト・ポンド安が続く。2015年には、例年よりポンド安の進行が抑制されたが、今もなお続く。2015年6月には独裁政権に対する大規模の抗議デモが起こり、数百万人がデモに参加するなど混乱は続いている。今後もポンド安が続く恐れがある。

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