本連載は、2001年創刊で第31号となる『中国株二季報 2017年春号』(株式会社DZHフィナンシャルリサーチ)の中から一部を抜粋し、ファンダメンタル分析から「埋もれたグロース株」を発掘・ご紹介していきます。執筆者は、中国株ウォッチャーとしても知られる、グローバルリンクアドバイザーズ株式会社の代表取締役、戸松信博氏です。

注目は、中国ネット業界の巨人「テンセント」

もしも、中国株で1銘柄だけを選んでくださいと言われれば、私はテンセント(00700)を選びます。過去、数百社の中国企業のファンダメンタル分析を行ってきましたが、テンセントは最も良いファンダメンタルを持っている銘柄です。

 

有望な中国ネット市場においてPC、モバイル共にチャット分野で独占的な地位を固め、その圧倒的な顧客基盤をベースにゲームなどの有料コンテンツや広告などを提供して高成長と高い利益率を実現してきました。独自で新たなサービスを創造する力はありませんが、有望サービスをいち早く探り当て、圧倒的な顧客基盤と資金力をベースに力業でもぎ取っていくことに長けています。

 

今はゲームが業績の主体ですが、広告をはじめ、ニュース、映像、音楽、決済、クラウドサービス、AR、教育、医療向けサービスなどアクセスできる市場は無数にあり、既に中国ネット業界の巨人ですが、業績はここから更に数年で数倍を目指せると思います。

 

しかし、リスクは高くてもいいので、もっと小型で、成功すれば大きな成長を期待できる銘柄はないのか? という皆様もいらっしゃると思います。図表はROE、予想売上・利益伸び率、証券会社の推奨の増減、株価などの各指標を独自の方法で点数化して、ファンダメンタルランキングを作成したものの上位50銘柄となります(米国に上場している中国株もランクキングに加えています)。

 

舜宇光学(02382)、テンセント(00700)、瑞声科技(02018)、申洲国際(02313)といった、いつもお薦めしている銘柄も上位に並びますが、中には見慣れない銘柄も。今回は主にこのランキング表の中から【埋もれたグロース株を発掘する】というテーマで、妙味があると思われる銘柄を数銘柄ご紹介したいと思います。なお、今回ご紹介する銘柄以外でも、ファンダメンタルランキングに記載されている銘柄には有望な銘柄があると思いますので、是非、その他の銘柄についても参考にしていただければと思います。

 

【図表】ファンダメンタルランキング 上位50銘柄

研究開発に強みを持つ「ライフテック

■ライフテック(01302)

心臓血管疾患治療の医療機器メーカーです。特に先天性心臓疾患の治療に使用するオクルーダーと呼ばれる閉鎖器具では世界2位のシェアを持ちます。

 

時価総額は約1000億円となる段階の企業で、研究開発力に強みを持ちます。売上規模もまだまだ小さいのですが、米大手医療機器メーカーのメドトロニック社と戦略資本提携を結びます。熱心に研究開発を進めており、その新製品の化け方によっては、バイオ医薬ベンチャーのような将来期待のある銘柄と思います。

 

とりわけ2016年に承認を目指すLAAオクルーダーに注目できます。左心房の不整脈の一種、心房性細動を治療する器具の一つで、期待の高い製品です。米国でLAAオクルーダーの承認を得た企業は、これによって売上を大きく伸ばしています。同社製品は性能的にも優れている模様で、2016年第4四半期にも発売を見込む欧州での需要も大きいことから、2017年以降に売上の柱となっていく可能性あります。また、中国でも国家食品薬品監督管理総局(CFDA)からの認可が取れれば株価上昇のカタリストに成り得ます(下半期に認可獲得を見込む)。

 

さらにその後は心臓ペースメーカーの発売期待があります。中国のペースメーカー市場の半分はメドトロニック社が押さえており、残りも外国からの輸入品となります。ライフテック(先健科技)はここへ国内ブランド、国内生産にて新規参入することになります。すでに開発拠点はできており、今後メドトロニック社の関与の下に臨床試験等を進め、2018-19年の発売を目指します。

 

メドトロニック社は現在19.0%の同社株を保有する第2位の株主です。そして保有する転換社債が全て株式に交換されると25.0%を持つ筆頭株主になります。恐らく今後心臓ペースメーカーの技術を全面的に移転する代わりに、そしてその事業が中国で上手く進んで行くのを確認するに従い、半数を超える割合を所有して子会社化していく狙いがあると思います。それくらいの見返りがないと、世界最高技術の全面移転などしないでしょう。

 

なお、メドトロニック社の時価総額は12兆円を超え、わずか1000億円の先健科技を子会社化することなど、たやすい事です。バランスシートは上場や社債による資金調達で、現金を多く保有します。これによって工場設備や研究開発センターを充実させているところです。ともあれ、これらのパイプラインがうまく進めば、2017年以降に相当大きな成長を期待できると思います。

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