前回は、駅からの距離・広さ・価格だけで判断してはいけない、マンションの選び方について取り上げました。今回は、「環境共生型住宅」開発の失敗事例を見ていきます。

1998年に環境共生型住宅第一号マンションが完成

今回は、筆者が在籍する会社の「環境共生型マンション」への取り組みを見ていきます。

 

新建材を見直す機運が社内に芽生えはじめた1997年、国土交通省(当時の建設省)が、環境共生住宅推進協議会を発足させました。これは「地球環境の保全、周辺環境との親和性、居住環境の健康・快適性を目指そう」といった趣旨の協議会です。

 

人と自然環境が調和する環境共生型住宅で快適な暮らしをつくりたい、と思ってはいたものの情報不足に苦しむ当時の私たちは、事業化を前提とした勉強をはじめました。

 

環境共生型住宅第一号マンションが完成したのは1998年。「今まであった樹木をできるだけ残す」、「工事のために抜く樹木は竣工後に移植する、または戻す」といった環境配慮を行います。屋上緑化や共有部分に区割りした農園を設置。提携した近所の農家の方を講師として迎え入れ、農業初体験の方でも野菜をつくれる企画としました。

 

また、木陰をつくる東屋や料理を楽しむ竈(かまど)をつくり、家族同士で集まり収穫物を食べながら、コミュニティが育まれる計画としました。さらに、雨水を活用する仕掛けも施し、入居者の環境意識を高めることにも注力しました。しかし、気が付くと数年で参加者は減っていきました。

森の気持ちよさ、楽しさを暮らしに取り入れたが…

次の環境共生型マンションは、日本野鳥の会から「エコガーデン」の認定を受けるほど、緑豊かな森の中に建つ設計を施しました。前回の失敗を踏まえ、木々の間を抜ける爽やかな風や木陰が織りなす空間構成を共用部分に設けることで、その気持ち良さが永続的に共用部分を活用する仕掛けになるのではないかと、期待を込めたのです。

 

開発前の現地は森のような場所で、竣工後には既存樹木の約60%が残る計画としました。バルコニーから高さ20m超の既存樹木を眺めることができ、敷地内には自然探索路と日本野鳥の会が認定する立ち入り禁止のエリアを設けて永続的な環境保全を、森の中に建つマンションでつくり上げたのです。

 

業界団体からは最優秀プロジェクト賞を受賞し、マスコミからも大変多くの取材を受けて高い評価を頂きました。しかしながら、入居されたお客様からは「周辺環境はいいよね」程度の評価で、私たちが期待した言葉は頂けませんでした。森の気持ちよさや楽しさを暮らしに感じてほしいと熱心につくり、販売も好調だったのに、なぜお客様はその良さを理解してくれないのか・・・。

本連載は、2014年3月20日刊行の書籍『なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか』から抜粋したものです。その後の法制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

なぜ新築マンションには自然素材が使われないのか

鈴木 雄二

幻冬舎メディアコンサルティング

注文住宅や、中古住宅のフルリフォームでは、当たり前に使われる、無垢フローリングや、珪藻土塗りの壁などの自然素材。 しかし、新築マンションだけが調湿効果の少ない合板フローリングやビニールクロスなどの新建材で作ら…

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