今回は、東南アジアの「バッテリー」として発展を遂げつつあるラオスの最新トピックスを紹介します。※本連載は、公認会計士・税理士で、久野康成公認会計士事務所所長、株式会社東京コンサルティングファーム代表取締役会長の久野康成氏が監修した『新興国ビジネス業界地図』(TCG出版)から一部を抜粋し、激変する新興国市場のうち、特に注目したい4カ国の現状と今後の動向予測を見ていきます。

メコン河の水資源を生かした「発電事業」が経済を牽引

南北1,500kmにわたり国土を縦断しているメコン河の豊富な水資源を生かした発電事業がラオスの経済を牽引。25カ所の水力発電所の発電能力3,244MWは国内需要の3倍を超え(2014年11月時点)、発電量の約8割が輸出される。

 

輸出額の26.1%(2013年時点)を電力が占め、銅と並ぶ主要輸出品目である。最大の輸出先はタイで、他の隣接国(ベトナム、中国、カンボジア)への輸出も始まった。

 

シンガポールへの供給に向けて、タイ、マレーシアを含めた4カ国の送電に関する協議を2015年に開始。国内の電力事情は、輸出が優先される傾向だが、電化率87%と開発途上国では類を見ない。

 

電力料金は約0.08USドル/1KWhで、バンコク(0.14USドル)、プノンペン(0.18USドル)と比べて非常に安く、FEZへの電力集約型産業の進出が相次ぐ。拡大するタイ・プラス・ワンの潮流において、カンボジアが労働集約型、ラオスが電力集約型の受け皿として棲み分けが進むだろう。

 

発電事業の拡大の背景にはラオス電力公社(EdL)の成功と、IPP方式(独立系発電事業者)での外資導入の成功がある。

 

タイ、中国、ベトナムなど隣接国の企業が参入しているだけでなく、関西電力の出資によるナムニアップ1ダムなどもあり、2020年に発電能力は約6倍となる見込み。水力発電でのCO2排出権の有効活用や、AEC発足後の電力流通進展により、内陸の小国ラオスが電力ハブとして存在感を増すことになる。

高成長する一方で、マクロ経済の脆弱さに課題も

ラオスは国連分類で後発開発途上国(LDC)の最貧国だが、銅などの鉱業、水力発電による電力、好調に推移する観光などにより、2006年以降7~8%の高成長を維持。政府の目標である2020年までのLDC脱却も夢ではない。

 

ただし労働人口の7割が農業に従事し、工業化・都市化による生産性向上と雇用機会の拡大には時間がかかる。製造業の未発達により、資源開発のための資本財輸入により貿易赤字が続き、外貨準備高はきわめて少ない。ODAと活発なFDIが経常収支を埋め合わせている状態には課題もある。

 

産業構造の多層化がLDC脱却の鍵とされており、製造業の進出が盛んなサワン・セノ経済特区(SEZ)、南北経済回廊の要衝に位置するビタパークSEZなどの動向が注目される。

新興国ビジネス業界地図

新興国ビジネス業界地図

久野 康成

TCG出版

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