増大する中国の「不良債権」・・・その実態を探る

今回は、増大する中国の「不良債権」の実態を探ります。※本連載は、金融情報全般を扱う大手情報配信会社、株式会社フィスコ監修の『FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう』(実業之日本社)の中から一部を抜粋し、中国経済の危うさと、日本経済に与える影響、世界経済への波及などを検証していきます(執筆:株式会社フィスコ所属アナリスト・田代昌之氏)。

調査機関が伝える中国の不良債権は、公式統計の約10倍

日本総合研究所では2016年8月10日付のレポートで、中国の不良債権残高は12.5兆元(日本円で約190兆円)と試算、金融市場の一部で話題となった。

 

中国の公式統計によると、2016年3月末の商業銀行の不良債権比率は1.75%、不良債権残高は1兆3921億元であるが、同レポートでは、不良債権の認定基準の甘さやオフバランスの与信なども対象に加え、実際の不良債権は公式統計の約10倍の規模と試算している。

 

先には、CLSA証券が5月6日付のレポートで、中国の不良債権は公式統計の少なくとも9倍あり、潜在的な損失は6兆9000億~9兆1000億元(約114兆~150兆円)と述べている。上場企業の債務返済能力について開示されているデータを基に試算し、不良債権が昨年の与信残高の15~19%だとの推計を示している。

 

そのほかにも、ゴールドマン・サックス証券では、中国当局が発表した2015年の社会融資総量が前年比19兆元(約300兆円)増なのに対して、24兆6000億元(約388兆円)が融資などの形で資金供給されていると分析している。みずほ総合研究所では、中国の過剰債務の規模は約50兆元(約750兆円)程度とのレポートを出していた。

 

また、ロイターでは、海外メディアが大手機関投資家対象に実施した月次調査において、中国政府が2年以内に銀行の救済を実施、約5000億ドルの資金を投入するという予想結果を紹介している。加えて、中国の銀行業を救済するには最大10兆ドルが必要だとの見方も浮上していると伝えている。

現在の中国不良債権は「バブル期の日本」に匹敵する!?

ここに来て中国の不良債権問題がクローズアップされてきているのは、IMF(国際通貨基金)の推計で、中国の企業債務が2015年末にGDPの144%に達し、バブル期の日本に匹敵する状況になってきていることなどが背景だろう。

 

一つの推計として、企業債務を基に考えた場合、企業債務対GDP比は日本のバブルが崩壊した水準にすでに達している可能性がある。

 

日本のピークは1994年の149.2%。このときの企業向け債務残高は670兆円の水準であり、このうちの15%(100兆円)が不良債権になった計算だ。2016年9月末の中国の非金融企業向けの債務残高は17.4兆ドル(約1790兆円)であり、日本と同様に15%が不良債権と考えれば、270兆円程度と推定することもできる。

 

今後の中国経済の行方を占ううえで、この不良債権処理がスムーズに進むのかが一つの焦点であることは間違いない。

 

不良債権の存在を隠して「蓋」をする可能性も

この世界的に懸念が強まっている不良債権問題について、中国政府がどのような対応をするのか。『中国経済はどこまで崩壊するのか』(PHP新書)の著者で、丸三証券のエコノミストである安達誠司氏は次のように語っている。

 

「中国の不良債権問題に関しては、政府が抑え続ける可能性が高いと考えます。不良債権の存在を隠し続けて蓋をする、というわけです。その方法としては、銀行をバットバンクとグッドバンクに分離し、バッドバンクに不良債権を集めて切り捨てる、といったことが考えられます」

 

「その場合、世界各国の投資家などは損失を被ることになりますが、中国経済には影響を与えないようにしていくことが可能です。ただ、そのためには人民元の供給が必要であり、元安とのバランスをどうとるかという問題は残るでしょう」

 

いずれにしても、そう遠くない将来にそのような事態が起こってもおかしくないほどには、中国における不良債権問題は顕在化してきていると言っていいだろう。

 

安達誠司 <PROFILE>

1965年生まれ。エコノミスト。東京大学経済学部卒業。大和総研経済調査部、富士投信投資顧問、クレディ・スイスファーストボストン証券会社経済調査部、ドイツ証券経済調査部シニアエコノミストを経て、丸三証券経済調査部長。近著に『中国経済はどこまで崩壊するのか』(PHP新書)がある。

 

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株式会社フィスコは、株式・為替など金融情報全般を扱う情報配信会社。ロイター、ブルームバーグ、クイックなどプロ向け端末や証券会社のほか、ヤフーファイナンスなど20以上の主要ポータルサイトに情報を提供する、投資支援サービスのプロフェッショナル集団。

写真はフィスコアナリストとして株式市場・個別銘柄や為替市場を担当する田代昌之氏。ビットコインなど仮想通貨についても造詣が深い。

著者紹介

FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう

FISCO 株・企業報 2017年春号 今、この株を買おう

株式会社フィスコ

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