新たな事業や産業の創出 「M&A」に期待される社会的な役割

今回は、新たな事業や産業を創出する原動力として、「M&A」は社会から期待されているという筆者の考えをご紹介します。※本連載では、『ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい。』(CCCメディアハウス)より一部を抜粋し、M&Aを成功に導くために、企業はどのようにファイナンスの技術を活用し、経営戦略を実施しているのかを紹介します。

M&A「社会悪」か?

前回M&Aというものは、より経営を上手に行うことができる自信のある経営者が、他の経営者から会社を譲り受ける行為なのです、とお伝えをしました。

 

これを聞いて、何か嫌な感じを受けた方もいらっしゃるかもしれません。M&Aや金融の世界には、「乗っ取り」とか「マネーゲーム」といったネガティブなイメージが付いて回ります。

 

一時期、堀江貴文氏がライブドアの社長在任中、メディアで「金で買えないものなどない」という発言をして非常に非難されたことがあります。当時M&Aにガンガン力を入れていた堀江氏がこのような発言をしたのを、メディアがはやし立てたため、金融イコール悪みたいな印象がついてしまったのかもしれません。

 

M&Aという概念にも、本当は売りたくもない社長から、金を積んで会社を取り上げてしまうもの、というようなイメージがあるかもしれません。

 

より能力の高い経営者が企業を譲り受けるというと、なんだか、能力が高い経営者が低い経営者から会社を取り上げ、追い出してしまうかのようなイメージができてしまうと思います。でも、現実はそんなことはありません。

 

M&Aで会社を売却するとき、売り手のオーナーはちゃんと金銭的対価を受け取っているのです。

 

企業を相応に成長させた対価をきちんと受け取ったうえで、納得して買い手にバトンタッチするのです。買い手と売り手の合意がなければ、M&Aというものは成立しません。

 

敵対的買収などという言葉がありますが、これも言葉のあやです。売り手側の株主が合意しているからこそ、買収が成り立つのです。スクイーズアウト、売渡請求等という言葉もM&Aには出てきますが、それ相応の対価も払わずに、勝手に乗っ取ったり、追剥をしたりするような真似は、法律上不可能です。メディアが自分たちで理解できない金融というものを、さぞ悪者のように書き立ててしまっただけでしょう。

 

先ほどの堀江氏の発言に戻りますが、実は堀江氏はこうも言っています。「金で買えないものは差別につながる。血筋、家柄、毛並み。金だけが無色透明で、フェアな基準ではないか」

 

先ほどの「金で買えないものなどない」は、堀江氏の発言の一部をメディアが悪意的に取り上げ、おもしろおかしく書こうとしたために、悪い印象になってしまっただけなのです。

 

M&Aもそうですが、買ったから偉いわけでもなければ、売ってしまったから魂を売り渡したわけでもありません

 

売却した売り手は、その功績にふさわしい対価を得て、売り手自身がより自分の能力を発揮できるような事業へと歩を進めることができるのです。

 

M&Aの仕組みとは、買い手側は自分の能力をより発揮する機会をその会社を買ってくることによって増やし、売り手は売り手で、売却して得た資金を使って自分がより能力を発揮できる他の事業を始められる、ということなのです。

M&A経営者能力活動!?

だとすれば、M&Aというのは、経営者の能力を競い合う活動であると言えます。

 

極端な意見かもしれませんが、私は、会社経営とはM&Aをすることだと考えています。

 

M&Aとは、才能という抽象物に値段をつけ、誰にでもわかりやすいフェアな世界を実現するためにあるのです。そして、このフェアな制度が、多くの投資家と起業家が集まる、安心できる活発な市場を形成するのに役立っているのです。

 

さらに言えば、これこそが世の中に埋まっている富や資金、あるいは才能を市場に引き込み、新たな事業や産業の創出の原動力になっているのです。

 

先ほど「M&Aは社会悪か」と見出しに掲げましたが、とんでもありません。M&Aとは、個人が自己の才能を具現化して、自己実現させていくための健全な手段なのです。

 

企業のトップがM&Aをする理由は、PER(株価収益率)の高い会社が低い会社を買収することで、自らの高い経営能力を買収した会社にも行き渡らせ、全体としての企業価値を高めていくためです。

 

逆に、他社からのM&Aに応じた側は、エグジットして得たお金を資金とし、次の事業を立ち上げたり、別の会社に投資したりする機会を得られたと考えるといいでしょう。こういう経済環境を作っていくことが、結果的に日本の経済をより元気にしていくことにもつながっていきます。

 

余談ですが、私が売却側で支援させていただいた経営者の方々は、売却後に引退を考えていても、引退後に気が変わって新たな事業を立ち上げるケースが非常に多いです。

 

これも、自分の才能を社会で再度具現化していきたいと考える、経営者の性なのかもしれません。

TIGALA株式会社 代表取締役

1986年奈良県生まれ。15歳で起業。インターネット事業を売却後、未公開企業同士のM&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や金融機関との交渉、企業価値評価業務に従事。
現在は、自身が代表を務めるティガラグループにて、ストラクチャードファイナンスや企業グループ内の再編サービスを提供。その他、複数の企業の社外取締役やアドバイザリーを務め、出資も行っている。
著書に、自身の15年間のキャリアを振り返った『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(CCCメディアハウス)がある。

著者紹介

連載M&Aを成功に導く「ファイナンス」の技術

ビジネスの世界で戦うのなら ファイナンスから始めなさい。

ビジネスの世界で戦うのなら ファイナンスから始めなさい。

正田 圭

CCCメディアハウス

ファイナンスという“考え方"を身につけると何ができるのか? ファイナンスがしっかりビジネスに活用できる法体制や環境が整ってきたのは、実はここ20年のこと。 しかし、ビジネスで実際に使えるファイナンスの技術をもって…

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