M.E. ポーターに学ぶ「競争優位性を持続する」ための企業戦略

今回は、世界的な経営学者である M.E. ポーターの理論から、競争優位性を持続するための企業戦略を見ていきます。※本連載では、『ビジネスの世界で戦うのならファイナンスから始めなさい。』(CCCメディアハウス)より一部を抜粋し、M&Aを成功に導くために、企業はどのようにファイナンスの技術を活用し、経営戦略を実施しているのかを紹介します。

「ポジション」を制する者がビジネスを制する

ここで、M&Aとは何かについて、一度整理しておきましょう。

 

M&AとはMergers(合併) and Acquisitions(買収)という言葉の略称ですが、ここでは私が考えるM&Aについて説明させていただきます。

 

M&Aのメリットを一言で表せば、それは「ポジショニング」に尽きます

 

そもそも、企業の究極の目的は、「競争優位性を持続すること」です。これは私の論ではなく、マイケル・ポーターなどの競争戦略論でよく論じられるポイントです。

 

企業には様々な社会的なミッションがあります。株主から預かっている資金を増やすこともそうですし、従業員の雇用を継続し、あるいは雇用を創出していくことも使命です。提供しているサービスや商品をエンドユーザーにお届けし、社会をより豊かにすることが企業活動です。

 

さらに、これらを持続していくことが求められています。1年や2年だけそのような活動をしていても意味がなく、多少の振り幅はあっても、このような活動を年々右肩上がりで、極論を言えば半永久的に続けていくことを求められているのです。

 

M&Aが活性化してきたことにより、企業はこの「ポジショニング」に関して、今までの戦略とは異なった、新しい戦い方を手に入れることになったのです。

 

企業に対するM&Aなどの財務アドバイスが私の本業ですが、これから企業が勝ち続けるためにはM&Aを必ず経営戦略に取り入れなければならないと確信しています。

 

M&Aこそが良いポジションを保持するための最大の戦略だと考えていますし、もっと言えば、会社経営の仕事とはM&Aである、とまで思っています。

 

そして、M&Aを理解するにはファイナンスを理解しなければいけない。

 

ファイナンスを極めるとM&Aに行きつきます

 

これほどまでに重要なM&Aとはどのようなものなのか、これから説明していきましょう。

宝印刷の例に見る絶妙な「寡占状態」

先ほど、企業は持続的な競争優位性を実現しなければならないというお話をしましたが、企業はどのようにそれを獲得すればよいのでしょうか?

 

マイケル・ポーターは1980年代に非常に有名になった経営学者です。アメリカを中心に多くの企業の戦略立案に携わり、「ファイブフォース分析」や「バリューチェーン」など多くの手法を産み出しました。

 

中でも『競争の戦略』(ダイヤモンド社刊)という書籍は、経営戦略論の古典として現代でも広く読まれています。

 

ポーターのいう「競争戦略」とはどのようなものかをかいつまんで説明すると、企業が競争優位性を持続するためには、適切な産業を選ぶ必要がある、ということになります。

 

簡単に言ってしまえば、ライバルが入ってきにくくて、価格破壊も起きにくい業界にポジショニングしなければいけないということです。

 

例えば、私が親しくさせていただいている宝印刷株式会社という企業があります。みなさんの聞き慣れない企業かもしれませんが、印刷業界の中でかなりおもしろいポジションにいる企業です。

 

宝印刷という会社は、印刷という名前がついていますが、普通のチラシとか名刺を印刷する会社ではありません。企業が投資家や取引先に情報開示する「有価証券報告書」などを専門に印刷(作成)する会社です。

 

この業界が大変おもしろい理由ですが、実は、このような印刷会社は日本で2社しか存在しないのです。

 

宝印刷とプロネクサスという2社の企業で、日本の上場企業のすべてから受注を得ているのです。これぞ典型的な寡占状態です。他の印刷会社は、なかなかこの分野に参入してきません。

 

なぜなら、普通の印刷会社がこの分野に進出しようと思うと、東京証券取引所が出している細かい規定に対応するための人員やスキルを手に入れるために、大きなコストがかかるからです。

 

その参入障壁は、中小企業の印刷会社が参入するにはコストが大き過ぎ、大手印刷会社からすると参入しても市場規模が小さすぎるという、「絶妙なポジション」をとっているのです。

 

それだけでなく、宝印刷は単純計算しても上場企業の約2分の1をクライアントに持つことになりますが、この情報の価値は計り知れないものがあります。

 

今、IoTなどのテクノロジーを利用したベンチャー企業がビッグデータの収集に力を入れていますが、宝印刷のような会社こそ、ビッグデータを手にしている会社と言えるでしょう。

 

もちろん、この優位性は永続的なものとは限りません。今はマネーフォワードやクラウドサインなどのクラウドサービスが次々と立ち上がってきており、脅威となり得るような新規プレイヤーが現れるかもしれません。

 

しかし、一度このようなポジションを手に入れると、企業の競争優位性はある程度持続的なものとなります

 

このようなメリットを手に入れるためにもユニークなポジションをとりなさい、ということがポーターの競争戦略論では述べられています。

 

ポーターの戦略をまとめると、次のような解釈も可能です。

 

競争戦略とは、競争しない戦略である。持続的な競争優位性を生むには、他社が入ってきにくくて、競争が少ない市場を選ぶべきである

 

このようなポジショニングを心がけていれば、確かに競争優位性は持続的なものになるでしょう。

TIGALA株式会社 代表取締役

1986年奈良県生まれ。15歳で起業。インターネット事業を売却後、未公開企業同士のM&Aサービスを展開。事業再生の計画策定や金融機関との交渉、企業価値評価業務に従事。
現在は、自身が代表を務めるティガラグループにて、ストラクチャードファイナンスや企業グループ内の再編サービスを提供。その他、複数の企業の社外取締役やアドバイザリーを務め、出資も行っている。
著書に、自身の15年間のキャリアを振り返った『15歳で起業したぼくが社長になって学んだこと』(CCCメディアハウス)がある。

著者紹介

連載M&Aを成功に導く「ファイナンス」の技術

ビジネスの世界で戦うのなら ファイナンスから始めなさい。

ビジネスの世界で戦うのなら ファイナンスから始めなさい。

正田 圭

CCCメディアハウス

ファイナンスという“考え方"を身につけると何ができるのか? ファイナンスがしっかりビジネスに活用できる法体制や環境が整ってきたのは、実はここ20年のこと。 しかし、ビジネスで実際に使えるファイナンスの技術をもって…

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