前回は、時代に翻弄された女性「マリー・アントワネット」へ想いを馳せました。今回は、フランスの「原子力政策」から著者が考えたことを見ていきます。

かつてはナポレオンも住んだフォンテーヌブロー宮殿へ

岸恵子さんが住んでいるシテ島東のサンルイ島はパリで地価が最も高いそうで、欧州も今は不況。ギリシャ人は脱税し、逆に日本は絆を唱える。

 

南東郊外のフォンテーヌブローの落ち着いた街に入り、一際幅広い典雅な宮殿に着く。レストランでローストポークなどの昼食をとってから、宮殿に入場した。

 

その様式からフランスの歴史を感じられるフォンテーヌブロー宮殿
その様式からフランスの歴史を感じられるフォンテーヌブロー宮殿

 

この館は最初狩猟に利用するために作られた。一六世紀に豪華な宮殿に改装され、その後も歴代の王により増改築が繰り返された。そのためルネサンス、バロック、ロココなどの様式が上手にミックスされ不自然さがない。ベルサイユに先行した美しさにより世界遺産に指定されている。

 

最後の館主は皇帝ナポレオンで、一八一二年、落ち目になった彼は宮殿の廊下で直臣を集め、退位を宣言し、連合国によってエルバ島に流された。

 

彼の立っていた場所に立つと、感無量だった。自国の清き精神、自由と平等を全欧州に広めるべく戦った史上一番の軍事的天才ナポレオンが編み出し、百年後日本は日露戦争の満州で使われた騎兵密集戦法を駆使したが、地政学上有利であるイギリスとロシアには勝てなかった。

世界一の「原発普及国」フランス

原子力発電所汚染問題――これこそ私が今回の渡仏で中心に調査したかった課題であった。最重要なことは、フランスの原発は日本の「企業型」と異なり軍の核部門と同体の国有発電所であるということである。だからフランスの盛大な原子力は国民が選んだものだ。

 

三・一一の直後、フランスのサルコジ大統領(当時)が日本に急いでやって来て政府と会談し、すぐ帰った。皆さんご承知のとおり、フランスは全電力量の七七パーセントを原子力に頼り、原子炉を五十九基所有している世界一の原発普及国といってよい。

 

二十七年前にこの国を訪れた時、内陸のオルレアン郊外でスリーマイル型の原発を農地の彼方に遠望して驚いたことがある。その頃、この国は既に南太平洋で水爆実験を終えていたらしい。

 

鉄壁の原子力国で、二〇世紀初頭キュリー夫人がラジウム放射線を命を捧げ発見して以来の強い伝統がある。日本は原発依存は二八パーセントにすぎないが、五十四基の原子炉をもつ。原発が海岸の市街地に多いので、地震一回で福島が大汚染され全国が深刻になった。一方のフランスには地震は皆無だ。

 

添乗員や現地ガイドは、いつも案内する当国のことに詳しい。フォンテーヌブロー近くのバルビゾンで空き時間があったので、三・一一直後にサルコジ大統領が来日した理由や、フランス政府の原発政策を問い質した。しかしサルコジの本音の目的は機密だろうからよくわからないとのこと。

 

そして半分冗談としては原発は多く南方のブドウ畑に造られた。理由は農業大国フランス北方の小麦、じゃがいもの穀倉地帯に造ると万一の汚染があった場合にワインより困るからだという。

 

それより具体的なのは原発三〇キロメートル以内の住民にヨウ素(半減期八日)の安定剤を国費で配布していることだ。確かにこの国はきめ細かい。

 

仏ロスチャイルド財閥と原子力の件は紙数の都合で次の機会に。日本では汚染対策も地震大国なのに粗雑で無念。ユーラシアの東端で、太平洋のプレート群に接する危険な場所で山林が多く逃げ場もない。日本は地震大国のため放射能汚染と埋設の決め手が未だにないというのが現状だ。

21世紀の驚くべき海外旅行

21世紀の驚くべき海外旅行

藤間 敏雄

幻冬舎メディアコンサルティング

旅行する前に知っておきたい世界各国の歴史や政治状況を実際に各国へ訪れた著者が記す。 ロシアなら独自のインフラやモスクワの風格、 スペインは内戦の傷跡や王の気質を、 アメリカのドラッグ問題… 各国の宗教・伝統…

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