前回は、大学の都心回帰や一人世帯の増加などにより、都心の賃貸住宅需要がさらに高まっている実情を取り上げました。今回は、都内の物件価値を上昇させる可能性がある、「ワンルームマンション規制」について見ていきます。

供給が制限され、既存の物件は資産価値が上昇

単身者が増えており、賃貸ニーズが高い都心のワンルームマンションは、東京都内で建築ラッシュになっているかというと、そういうわけではありません。

 

なぜなら、ワンルームマンションの建築は、23区全域で条例もしくは指導要綱で規制を受けているため、新しくワンルームマンションを建築する際の建築条件が厳しく、供給が制限されているからです。これを通称「ワンルームマンション規制」と言い、建築しようと思えばいくらでも建てられる全国の投資用物件と23区ワンルームマンションの大きな違いになります。

 

これにより、東京23区内のワンルームマンションは供給が抑えられ、逆に既存のワンルームマンションオーナーは、資産価値が上がりライバル物件が増えづらいというメリットを得る結果に繋がりました。

 

東京都内の世帯数は、700万弱。単独世帯の割合も年々上昇している中、都内のワンルームマンションのストックは25万戸と言われており、単独世帯数の上昇に追いついていないのが現状です。

 

ワンルームマンションの建築が、ワンルームマンション規制として条例や指導要綱で制限され始めたのは2007年のこと。表向きは、「単独世帯が増えることにより地域の活動に支障が出る」「深夜の騒音問題に繋がる」といったことが理由として挙げられていますが、本当の理由は2007年に行われた税制改革による影響が規制のきっかけです。

ワンルームマンションの規制は「住民税の増収」が目的

2007年に「税源移譲」という税制改革が行われました。これは、中央から地方自治体に所得税を分配することをやめ、地方税(住民税)の割合を強め地方自治体の独立性を強めるという税制改革です。

 

これにより、下記の図表のように地方自治体の財源は、「住民税」「法人税」「消費税」などがメインになりました。地方自治体は限られた土地の中で効果的な都市開発を行わないと、住民税という貴重な財政源を失うことになります。

 

そこで、住民税を支払わない地方から上京してくる大学生や所得の低い若いサラリーマンを排除し、ファミリー世帯や法人を誘致する方向性へとシフトしていきました。若年層の住まいであるワンルームマンションの建築を規制し、ファミリー層の割合を増やすことを目的として制定されたのが「ワンルームマンション規制」です。

 

[図表]税源移譲について

 

ワンルームマンションのメリットは、都心の狭い土地に、いわゆるペンシルマンションと呼ばれている高い建物を建てられたこと。

 

しかし、ワンルームマンション規制の後では、ファミリーマンションを建築の際に組み込まなければならなくなり、まとまった土地が確保できなければ、ワンルームマンションの建築は、できなくなってしまいました。そのため、ワンルームマンション規制の後では、都心での供給は難しくなったため(ペンシルマンションの建築が難しくなったため)逆に、都心のワンルームマンションの価値が高まるという結果に繋がっています。

 

これは、オーナー側の立場としてみた場合、圧倒的に有利です。先程、どんなに優秀な不動産投資家でも賃貸需要は増やせないと話しましたが、物件の供給が制限されていれば、需要と供給のバランスは保たれ、オーナーが所有している物件の資産価値は高いままに保たれます。

 

「いつでも作れる量産品」と「数に限りのある限定品」とでは、後者の価値が高くなるのは当然です。都心のワンルームマンションは、相続対策でアパートが乱立しやすいエリアに比べ、賃料の安定性は高くリスクの少ない不動産投資と言えます。

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