今回、シンガポール人の仕事に対する価値観と取り組み方について見ていきます。※本連載では、ビズラボシンガポール所長、日本アシストシンガポール代表取締役・関 泰二氏の著書『シンガポールとビジネスをするための鉄則55』(アルク)の中から一部を抜粋し、仕事でシンガポールに関わる人が知っておくべき基礎知識をご紹介していきます。

相手の社内での「役割やポジション」を必ず把握する

Q.シンガポール人と円滑に仕事をするためのヒントを教えてください。

 

A.自分の役割に忠実で、与えられた範囲外の業務はやりません。イライラせず、メリットに目を向け対処を工夫しましょう。

 

シンガポールの企業では、欧米の企業と同様、個々の社員の役割が明確に決まっています。日本では、お客様に尽くすことが優先されてきたため、自分の役割や専門分野以外の仕事であっても、お客様に求められればこなします。しかしシンガポールでは、上司やお客様から依頼されても、雇用時に取り交わしたジョブディスクリプション(職務説明書)に定められた範囲外の仕事は、一般的に行いません。担当の部署や社員に仕事を回します。

 

対応をたらいまわしにされることもありますし、担当者が長期休暇だったりすると、対応が数週間も滞ってしまうことがあります。日本であれば代理の人が対応してくれたりしますが、シンガポールではそういった対応は行わないことが多いです。

 

このため、シンガポールで仕事をする場合は、相手の社内での役割やポジションなどを、しっかり把握しておく必要があります。役割の範囲外の仕事を依頼すると、たらい回しにされたり、決定権がある人に案件が回るのに時間がかかったりします。

 

また、伝言ゲームになるので、情報が誤って伝わりトラブルの原因になります。

 

転職が多いことも、考慮に入れておくとよいでしょう。商談をしていた相手が、突然退職することもあるので、密にコミュニケーションを取るよう心掛けます。その担当者が退職すると、また1から商談をやり直すということも起こりえます。

「自分の生活や家族」を大切にするシンガポール人

自分の担当範囲外の仕事はしないというのは、日本的な仕事のやり方とは異なるので、最初は違和感があるかもしれません。しかしこれは、担当する範囲の仕事に対しては、高い向上心を持って、責任をもって取り組むことの裏返しでもあります。

 

日本との違いに目を向けてイライラするのではなく、単に仕事への取り組み方が違うのだと理解して、対処を工夫するとよいでしょう。

 

また、シンガポール人は、自分の生活や家族を大事にしています。会社や仕事のために自分の生活や家族を犠牲にすることはありません。子育てや、家族の生活環境のために転職する人も、珍しくありません。最近では日本でも、ワークライフバランスの考え方が広がってきましたが、こういった家族を大切にするシンガポール人の考え方からは、日本人も学ぶところがあるかもしれません。

シンガポールとビジネスをするための鉄則55

シンガポールとビジネスをするための鉄則55

関 泰二

アルク

アジア進出への第一歩の場として注目を浴びるシンガポール。現在、1000社以上の日本企業がシンガポールに拠点を置き、さらに増加傾向と言われています。 本書は、仕事でシンガポールに関わる人が知っておくべき「鉄則」をコン…

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