前回は、長期インターンシップ生を「効率よく」活用する方法を説明しました。今回は、インターン生の受け入れによって企業に損害が生じた場合の対応について見ていきます。

研修内容は「事故のリスク」を考慮して決定する

インターン生を受け入れる際には、労働関係の法律に関しても留意が必要です。賃金が発生しインターン生が「労働者」に当たる場合は、労働関係の法規の適用があります。学生が「労働者」とは認められない場合にも、企業内での事故に対しては、労災保険適用の有無にかかわらず、企業が学生に対して安全配慮義務を負うことは避けられません。

 

万が一、事故についての過失が認められれば損害賠償の責任が発生することになります。インターンシップを実施する企業としては、事故のリスクを考慮して、見学にとどめるか、実習させるか、どの程度まで踏み込んだ研修を実施すべきかを決定しなければなりません。

 

インターンシップに関連する事故としては、「企業側の過失などによる学生の不利益」と「学生の過失などによる企業の不利益」が想定されます。

 

①インターン生に事故が生じたら

 

事故へのリスクを完全に回避したいのであれば、研修をしないか、文字通り座学の一般研修にとどめるべきでしょう。しかし、それではインターンシップの趣旨である実務経験ができません。

 

学校の正課または課外活動として実習をする場合には、学生教育研究災害傷害保険(任意加入)の適用対象になります。学校が関与していない場合については、企業または学生個人が一般の傷害保険などで個別に対応できます。

 

あまり考えたくないことですが、万が一の事故に備えて学生個人や学校、会社の負担をできる限り軽減するため、保険へ加入しリスクに対する備えを十分にしておくことが必要です。

 

厚生労働省が募集しているインターンシップにおいても受け入れに際しては、「災害傷害保険、賠償責任保険に加入していることを条件とします」と明記していることも参考になります。

企業に生じた損害をカバーする保険へ加入する手も

②企業に損害が生じた場合

 

学生の過失による企業の損害(機器・ソフトの損壊、機密漏洩など)が発生するリスクも考えられます。学生の過失により企業に生じた損害は、本来は学生が企業に対して賠償すべきですが、企業に生じる損害は甚大で学生が損害を賠償することが不可能な場合が多いでしょう。

 

ETIC.のようなコーディネーター機関が間に入っていれば、プランの中に保険への加入も含まれていますが、そうでない場合は学生も、企業に生じた損害をカバーする保険へ加入することも考えておいたほうがよいでしょう。

 

これらの対応方針などについては、学校・学生・受け入れ先の3者間で、保険への加入状況などをできる限り文書で明確化しておくことが望ましいでしょう。

 

このように、長期インターン生を受け入れる企業がリスク回避に関する知識を事前に把握しておくことは、学生を有効に活用するうえでとても重要なのです。学生は意欲にあふれ、何にでも果敢にチャレンジしますが、その意欲が空回りしてトラブルにつながらないようにコントロールすることが必要です。

 

インターン生が最も価値を置き、求めているのは「成長」と「評価」です。

 

「これは以前よりもできるようになった」

「当初に比べると顧客対応がスムーズになった」

「周りを見て、先回りして動けるようになった」

 

と明確にフィードバックをすることです。

 

学生自身が成長を実感するのはもちろん、周りから「成長した」と評価されることが次のステージへの活力になります。職場では社員と変わらない扱いを受けますが、学生であることには変わりありません。

 

社会人としてのスキルや常識を最初から持ち合わせているわけではないので、何がよくて何が悪いのか、そこをはっきりと伝えることが大切です。きっと社内では、社員やパートスタッフなどの誰よりも「向上心」が高い存在でしょう。

 

学生本人は「成長」を目的にしているため、アドバイスや注意をするとすぐさま吸収し、成長が早いのです。意欲が強く、成長している学生に対して活躍できるフィールドやチャンスはおしみなく与えてください。

本連載は、2016年11月12日刊行の書籍『事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

事業拡大を実現する中小企業のための「長期インターン」活用戦略

佐藤 均

幻冬舎メディアコンサルティング

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