前回は、会社経営における「会計・経理・財務」の違いについて説明しました。今回は、銀行が融資の可否を判断する「5つのポイント」について見ていきます。

銀行がチェックするのは「返済できる可能性」

さて、銀行が融資の可否を審査する際、いくつかのチェックポイントがあります。それは、以下の5つです。

 

①借入目的が明確であること

②目的に合った事業計画ができていること

③税金の未納がないこと

④3期連続黒字の決算であること

⑤純資産の部が資本金以上の数字であること

 

①と②については後述しますが、簡単に言うと、①は融資したお金が何に使われるのか、利益にどうつながるのかを見ています。②は、事業に計画性があるか、実現性がどの程度あるかを見ています。

 

「1000万円貸してくれたら、うちは2000万円の利益が出るから返せますよ」と社長が言っても、それが本当かどうかはわかりません。ですから、どんな使い方をするつもりなのか、本当に返済できる可能性がどれくらいあるのかを銀行側はチェックするのです。

 

③④⑤についても「返済能力」を査定するためにチェックします。

「納税していること」が黒字経営のバロメーター

まず、③ですが「きちんと納税ができていること」が融資の大前提になります。

 

毎年期末が近づいてくると本当に頭が痛いです。できればたくさんは納めたくない……というのが偽りのない本音でしょう。国や自治体が税金の無駄遣いをしたり、不正な使い方をしているというニュースを聞くと、怒りを感じます。

 

ですが、経営者としてはグッと堪えて税金を払いましょう。なぜなら、黒字経営だからこその納税だからです。銀行にしてみれば、納税していることが黒字経営のバロメーターになるのです。

 

極端な社長になると、「何が何でも税金を払いたくない」という人もいて、決算を赤字にしたがる人がいます。しかし、融資を受けるには、原則的に最低3年前から黒字でないと審査が通りません。税金を回避するために赤字を出し続けていると、いざ融資が必要となったとき、「こんな業績では貸せません」となってしまうのです。

 

銀行がお金を貸したくなる会社とは、つまり、健全な経営がなされている会社です。それは、適切にお金を使い、適切に納税している会社のことをいいます。

 

納税額をできるだけ抑えるための「節税」の本などもありますが、過度な節税はお勧めしません。余分に納税する必要はありませんが、適正な納税はすべきと考えます。

無駄に資金を使うより「適切な納税」をする方が効率的

節税本を見ると、あたかも節税が良いことのように書いてあります。そこでは一番簡単な節税法として「経費を増やして利益を減らす」ことが提示されています。それで、期末が近づくと、「何か買っておくものはないか」「経費になるものはないか」と考え、あれこれと必要のないものを買ってしまう社長が多くいるのです。しかし、必要なものにお金を使うことは後々の利益を生むことになるのでいいですが、必要ないものに使ってしまうと、たいてい「消費して終わり」になってしまいがちです。無駄にお金が消えていき、資産として残りません。それでは会社の資金が減るだけです。

 

経費を増やすためにあれこれ買いすぎて、結局、手元にお金が残らなかったという社長を何人も見てきました。

 

現在、法人税の税率は軽減されてきています。小規模企業の場合、課税所得800万円までは19%、800万円を超えた部分は23・4%です(2016年4月以降に開始する事業年度)。

 

納税が惜しくて、たいして必要もないものに100万円を使って経費計上をしたとします。しかし、結局それが収益にはつながらなかったとしましょう。すると、100万円が無駄になります。

 

一方、100万円を使わないで納税したとします。会社の利益額にもよりますが、地方税も含めると、税率は30〜40%です。つまり、半分以上は手元に残ります。無理に資金を使ってしまうより、納税したほうが会社に残るお金が多くなるのです。手元に残ったお金は万が一のために置いておいたり、有効活用したりすればいいでしょう。

 

税対策というのは、「税金を浮かせるための対策」ではなく、「余分に納めすぎないための対策」と考えましょう。

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

銀行に好かれる会社、嫌われる会社

鈴木 みさ

幻冬舎メディアコンサルティング

人口減少とともに市場が縮小し、内需にかげりが見える昨今。働き手の不足による業務負担の増加など、小さな会社は厳しい状況に置かれています。実際に、9割の企業が起業後30年以内に消滅しているというデータもあります。そん…

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