今回は、地下横断歩道タイル張工事の瑕疵及び瑕疵担保責任の期間についての判例を見ていきます。※本連載では、弁護士・犬塚 弘氏の編集(代表)、共著『建築紛争 判例ハンドブック』(青林書院)の中から一部を抜粋し、建築紛争の中でも「契約の有効性・仕事の完成」に関する重要判例(判決の内容、解説)を取り上げ、紛争予防と問題解決への実務指針を探ります。

元請が起こした瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求

【ケース】

地下横断歩道タイル張工事の瑕疵及び瑕疵担保責任の期間

東京地裁平成20年12月24日判決(平成17年(ワ)第12018号、平成18年(ワ)第1388号)

判例時報2037号55頁

 

【争点】

1 地下横断歩道タイル張工事の瑕疵

2 本件下請契約に基づく瑕疵担保責任期間の解釈

3 瑕疵担保責任により生じた損害

 

【判決の内容】

●事案の概要

X1、X2はいずれも土木、建築工事の請負等を業とする株式会社であり、Yは建材等の販売・施工等を業とする株式会社、Yの補助参加人はタイル工事の設計、施工、請負等を業とする株式会社である。

 

1 元請契約

国は本件地下道の建設を計画し、X1と本件地下道の工事に関する請負契約を締結し(以下「本件元請契約①」)、X2とも本件地下道の工事に関する請負契約を締結した(以下「本件元請契約②」)。本件元請契約①、②には、Xらの瑕疵担保責任期間につき、原則として引渡日から2年以内、瑕疵がXらの故意又は重大な過失によるものである場合には10年以内と定められている。

 

2 下請契約

X1は、Yに対し本件元請契約①に基づく工事の一部であるタイル張工事一式(以下「本件工事①」)を発注し、下請契約を締結した(以下「本件下請契約①」)。同契約には工事下請基本契約約款(以下「基本契約約款」)が添付されており、基本契約約款には瑕疵担保責任期間の定めがあったが原則の期間は空白になっており、故意又は過失があった場合の期間も空白のままであった。

 

X2は、Yに対し本件元請契約②に基づく工事の一部であるタイル張工事一式(以下「本件工事②」、本件工事①とあわせて「本件各工事」)を発注し、下請契約を締結した(以下「本件下請契約②」)。本件下請契約②には、Yの瑕疵担保責任期間につき、原則として引渡日から2年間、瑕疵がYの故意又は重大な過失によるものである場合には10年間と定められている。

 

3 孫請契約

補助参加人はYから本件各工事を請け負い、本件各工事を完成させて、Xらに引き渡した。

 

4 Xらの請求

XらはYに対し、本件地下道の広範囲にわたりタイルの浮き、ひび割れ(以下「本件不具合」)が生じたとして、本件下請契約①、②に定められた瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求として、原因調査費用、応急処置費用、補修工事費用相当額等の支払を求めた。これに対しYは本件各工事の瑕疵を否定し、瑕疵が認められるとしても瑕疵担保責任期間の経過によりXらの損害賠償請求権は消滅したと主張した。

「下請契約」に基づく瑕疵担保責任期間の解釈

判決要旨

1 本件各工事の瑕疵

本判決は、本件各工事施工後約6年で、本件地下道の壁面等の広範囲にわたり本件不具合が発生していることを認定した上で、本件各工事の施工要領書、本件各工事に使用した素材の施工要領書、当該素材の試験報告書、「建築工事標準仕様書・同解説JASS19陶磁器質タイル張り工事」がタイル張工事について「建築工事標準仕様書・同解説JASS15左官工事」によるべきと定めていること及び仕様書の内容等から、タイル張工事作業に際しては、必要な下地モルタルの厚みに応じ、数回に分けて作業を繰り返す必要があったところ、本件各工事では必要な作業手順がとられなかったため、本件不具合が発生したものとし、YにはXらに生じた損害を賠償すべき責任があるとした。

 

2 本件下請契約に基づく瑕疵担保責任期間の解釈

本件下請契約①の瑕疵担保責任期間が空欄とされていることにつき、X1が発注者である国との関係で瑕疵担保責任を負わない場合には、下請人であるYに対して瑕疵担保責任を追及することは想定し難いこと、本件元請契約①では10年の瑕疵担保責任期間につき故意又は重大な過失を、本件下請契約①では故意又は過失と規定されていることからしても、本件下請契約①においてX1とYは瑕疵担保責任期間を本件元請契約①と一致させるという趣旨であったと解するのが相当であるとし、本件下請契約①、②の瑕疵担保責任期間はいずれも故意又は重大な過失がある場合には10年間になるとした。そしてYには重過失が認められるとして、X1の請求を全て、X2の請求の一部を認めて、XらのYに対する損害賠償請求を認容した。

建築紛争判例ハンドブック

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