前回は、住宅メーカーにおいしい制度でもある、「家賃保証」のカラクリを取り上げました。今回は、家賃保証は「安定収入の約束」ではないという点について見ていきます。

建物の維持管理に必要な費用の多くはオーナー負担

前回に引き続き、家賃保証のカラクリを見ていきます。

 

四つ目のポイントとして、家賃保証で差し引かれる手数料のほかに、建物の固定資産税をはじめ、オーナーにはさまざまな費用負担がかかることも覚えておきましょう。

 

家賃保証契約において、建物の管理業務は管理会社に委託するケースが大半ですが、その維持管理に必要な費用のかなりの部分は、オーナーが負担することになります。大がかりなリフォームにかかる費用、日々の巡回点検にかかるコスト、さらに植えた草木が枯れていれば、木の植え替えの費用はオーナー負担です。地震や火災、風水害などによる損傷も然りです。

 

東京都においては、入居者が退去する際の敷金の清算については、2004年、「東京ルール」と呼ばれる制度ができました。この制度により、経年変化および通常の使用による損耗等の復旧に要する費用は、全てオーナーが負担しなければならなくなりました。

 

また、入居者が決まらないと、まだ物件が新しいにもかかわらず、頻繁に修繕や改装を要求されることもあります。工事は管理会社の指定業者のため、工費が高くつくこともあり、拒むと契約解除となりかねないのは先に触れた通りです。

管理の手間は省けても、経営の手綱は管理会社に・・・

ここまで読んで、家賃保証という言葉の響きに反し、決してオーナーにとって安定収入を保証するメリットが多い制度とはいい切れない実情が見えてくると思います。

 

家賃保証の契約をしても、オーナーは借入金返済の金利上昇リスクを抱えていることに変わりはなく、固定資産税等の負担もあります。建物の維持・修繕費用も負担しなければなりません。

 

空室リスクはなくなりますが、契約賃料の引き下げというリスクに形が変わるだけなので、抱えているリスクにさほど変化はありません。管理の手間は省けても、オーナーとは名ばかりで、経営の手綱は管理会社に握られてしまうのです。

 

念のため申し上げると、家賃保証を全面的に否定する気はありません。「万一の保険のために家賃保証してほしい」という人もいるでしょうし、「手数料を払っても、管理の手間を省きたい」というニーズにはフィットする制度だと思います。

 

しかし、契約を結ぶ際には、メリットとデメリット、および契約の全容をしっかりと押さえることが肝要です。

 

そもそも、賃貸経営を実践する際には、「家賃保証ありき」ではなく、家賃保証がなくてもしっかりと収益を上げられるようプランニングをすることが大前提です。ゆめゆめ「家賃保証があるから安心です」という営業トークに惑わされないようにしましょう。

本連載は、2016年10月9日刊行の書籍『あなたの資産を食い潰す「ブラック相続対策」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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秋山 哲男

幻冬舎メディアコンサルティング

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