前回は、諸外国の「交通事故による複数障害」に対する評価方式を紹介しました。今回は、損保料率機構の理事会で、後遺障害認定の話が取り上げられない理由を見ていきます。

自賠責の等級認定の問題は話し合われていない!?

本連載では、後遺障害の認定について、障害者を救えない問題や、画像に映らない新たな後遺障害の問題など、いくつもの課題があることを明らかにした。

 

そこで一度、損保料率機構に話を戻そう。最高機関である理事会でどんなことが話し合われているのか皆さんはご存じだろうか?

 

損害調査、すなわち自賠責の等級認定の問題に関してはほとんど話し合われていないのだ。実際、ディスクロージャー資料を見ても議題に上るのは基準料率や参考純率であり、人事に関することがほとんどである(以下の図表を参照)。

 

[図表]損保料率機構理事会の議案 平成26年4月26日~11月26日

133万件の認定依頼者の叫び声は届かず・・・

自賠責損害調査に対する異議申し立ての状況がごくたまに報告されるだけで、損害調査の話が議題に上ることは皆無に等しい。

 

同機構の現場の人間が矛盾を感じて声を上げても、ほとんど届かないのである。その現実に日々直面していれば、やがてあきらめから問題意識も持たなくなるだろう。そして組織の中だけを見て仕事をするようになる。

 

組織の論理にどっぷりとつかってしまえば、外にいる多くの人の気持ちは分からない。まして理事会などは雲の上の存在だ。133万件の認定依頼者の叫び声などはまさに外界であり下界の出来事なのだろう。彼らの耳には我々の叫びなどほとんど届いていないのである。

本連載は、2015年12月21日刊行の書籍『虚像のトライアングル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

虚像のトライアングル

虚像のトライアングル

平岡 将人

幻冬舎メディアコンサルティング

自賠責保険が誕生し、我が国の自動車保険の体制が生まれて約60年、損害保険会社と国、そして裁判所というトライアングルが交通事故被害者の救済の形を作り上げ、被害者救済に貢献してきたが、現在、その完成された構図の中で各…

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