前回は、複数箇所の障害と、一箇所の障害で、賠償額が変わらない理由を説明しました。今回は、諸外国の「交通事故による複数障害」に対する評価方法を見ていきましょう。

個別対応・ケースバイケースで認定するフランス

このような不可解な基準はできるだけなくしていくべきである。ちなみに諸外国の場合、複数障害の認定はどのような基準で行っているだろうか?

 

フランスには明確な基準はないが、複数障害の場合は総合的に行われなければならないとされている。フランスには査定医制度があり、専門家が被害者の後遺障害の程度を把握している。

 

まさに個別に対応しながらケースバイケースで認定をしている。それがうまく機能していることは、権利意識の強い国民性にもかかわらず、交通事故訴訟が非常に少ないということからも推測ができる。

障害の度合いをパーセンテージで表すスウェーデン

またスウェーデンの場合は、障害度を保険協会作成の医学的障害等級表(労災などでも広く適用されている基準)に基づいて決定する。

 

我が国のように障害度を等級で区切るのでなく、どの程度の障害かをパーセンテージで表している。そしてA%の障害とそれ以下のB%の障害があった場合は、累積割合総合評価方式と呼ばれる算出を行う。計算式は次のようなものだ。

 

障害の複合値=A%+B%(100%-A%)

 

たとえばAが30%、Bが20%だったとすると

 

30%+20%(100%-30%)=44(%)

 

となるのである。単純ではあるが意外に理に適った算出法ではないだろうか?

 

仮にこの計算式で日本の労働能力喪失率を計算してみよう。14級の場合の労働能力喪失率は5%。現行の自賠責の基準では併合14級の場合は等級繰り上げがなされないので5%のままだ。しかし累積割合総合評価方式で計算すると、

 

5%+5%(100%-5%)=9.75(%)

 

となる。14級の障害をいくら抱えても、14級で変わらず賠償額は同じ日本と比べたら、どちらが被害者救済としてふさわしいか? 改めて述べるまでもないだろう。

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    本連載は、2015年12月21日刊行の書籍『虚像のトライアングル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    虚像のトライアングル

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    平岡 将人

    幻冬舎メディアコンサルティング

    自賠責保険が誕生し、我が国の自動車保険の体制が生まれて約60年、損害保険会社と国、そして裁判所というトライアングルが交通事故被害者の救済の形を作り上げ、被害者救済に貢献してきたが、現在、その完成された構図の中で各…

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