前回は、交通事故被害者の救済という視点を欠いた裁判所の問題点を取り上げました。今回は、厳しい状況に置かれる「交通事故被害者」の現状を見ていきます。

加害者に有利な裁判、過剰診療、治療費打ち切り・・・

これまで見てきたのは、賠償交渉に入る前の段階の交通事故被害者の置かれた状況である。

 

症状固定までの保険会社や治療機関のそれぞれの思惑の中で翻弄される被害者、必要なことを知らされないことで不利益を被る被害者、重要な証拠である刑事捜査や、重要な被害感情の実現である刑事処分においてもその意が反映されない被害者。

 

被害者自身は治療に関しては医師が頼りである。医師が勧める治療を断ることなどできないし、濃厚診療や過剰診療など普通は意識してはいない。

 

また、大手企業である保険会社は一般市民にとっては頼りになる存在であり、圧倒的な知識を有する専門家であり、その言う通りにしていれば間違いないと思うのは通常である。もちろん、捜査権を有する警察、起訴権限を有する検察への信頼が厚いことは言うまでもない。

 

そのような状況の中で、突然の症状固定の宣告や、損保の勝手な治療費打ち切り――。さらに、過失割合でもめて、蓋を開けてみれば、相手の言い分だけが記録として残されている。

交通事故被害者は「二度」泣かされる

そもそも突然の事故で傷害を負った被害者は、痛みの苦しみだけでなく後遺障害の恐れなど、これまで体験しなかった不安に襲われる。また、突然の環境の変化、仕事を休むことによる不安など、精神的に不安定な状況に置かれるのが常である。

 

ところがそんな精神状態に追い打ちをかけるような保険会社や医師からの心ない言葉や態度に傷付き、また自らの状況が誰にも理解されないという孤立感から精神的にまいってしまう被害者が後を絶たない。

 

このような、被害者の置かれた状況、被害者が事故による受傷の苦痛だけでなく、その後の状況によって苦痛を受けること。これを、私たちは交通事故の二次被害と呼び、大きな問題だと認識している。

 

交通事故被害者は二度泣くのである。国策による被害である交通事故で、被害者をこのような状況に置くことが、なぜ許されているのであろうか?

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    本連載は、2015年12月21日刊行の書籍『虚像のトライアングル』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    虚像のトライアングル

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    平岡 将人

    幻冬舎メディアコンサルティング

    自賠責保険が誕生し、我が国の自動車保険の体制が生まれて約60年、損害保険会社と国、そして裁判所というトライアングルが交通事故被害者の救済の形を作り上げ、被害者救済に貢献してきたが、現在、その完成された構図の中で各…

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