今回は、住宅ローンを組むとした固定金利を選ぶべきなのか、それとも変動金利を選ぶべきなのかを考えてみます。※本連載は通貨・国際投資アナリストの小口幸伸氏の著書、『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋し、「マイナス金利時代」を生き抜くために個人投資家が知っておくべき大原則をお伝えをしていきます。

住宅ローン減税でマイナス金利と実質的に同じに!?

マイナス金利の導入で個人が最も恩恵を受けるのが、住宅ローン金利の低下です。普通の個人にとって、おそらく人生で最も多額の借入金の金利が下がるのだから、大きなメリットです。

 

住宅ローンにはローン期間中金利が一定の固定型と、一定期間(6か月)ごとに見直す変動型があります。固定型は長期金利が基準になっていますが、3メガバンクの10年固定の最優遇金利は0.8%に低下しました(2016年3月現在)。過去最低水準です。

 

金利低下を受けて住宅ローンの申し込みは増えましたが、特に借り換えの申し込みが増えました。ローン残高が多く、返済期間が長いほど、借り換えのメリットは大きくなります。しかし借り換えが有利にならない場合もあります。借り換え費用(保証料など)がかかるからです。目安としては、ローン残高1000万円以上、残りの返済期間10年以上、借り換えローンとの金利差1%以上のいずれかに該当する場合、と言われています。

 

住宅ローン金利はマイナスにはなっていませんが、住宅ローン減税との組み合わせにより実質的にマイナス金利になるケースもあります。住宅ローン減税では、ローン残高の1%が税額控除で、10年間戻ります。そこで最初の10年はローンの支払利息よりも控除額の方が多くなることがあります。そして減税期間終了後に一括返済すれば、事実上マイナス金利になります。

固定金利なら金利変動リスクをヘッジできる

変動型は短期プライムレート(短プラ)が基準になっていますが、主要行の水準は1.475%と2009年以降据え置かれ、マイナス金利導入後も変わりませんでした。多くの金利が下がる中で短プラだけが下がっていない状況で、2001年から06年にかけての過去最低水準1.375%を上回る状態が続きました。短プラは1年未満の短期貸し出しの基準金利で、特に中小企業の融資には短プラ連動型が多く、住宅ローンでも半分以上は短プラが基準の変動型です。

 

銀行サイドから見れば、預金金利の下げ幅が限られる中で短プラを下げると利幅が縮小し、収益が圧迫されるとの懸念がありました。その結果、短プラが長プラを上回る逆転現象が続いたのです。こうなるとマイナス金利の政策効果がうまく浸透しないことにもなります。

 

ただ、インターネット銀行などが住宅ローンを提供していて、金融機関の競争も激しく、実際に適用する変動金利のローンは低下しています。2016年3月現在では0.5%(三井住友信託銀行)になっています。

 

住宅ローンは固定か変動か、という課題になりますが、一般的には金利低下が見込まれるなら変動型、金利上昇が見込まれるなら固定型ということになります。

 

日銀総裁は、物価や景気の状況が改善しなければ、マイナス金利の拡大を示唆しています。その意味ではさらなる金利低下が見込まれます。どこまで低下するかといえば、日銀当座預金への付利はマイナス0.5%が一応の限度という見方があります。そうなるとあと0.4%です。

 

ただし、住宅ローンの金利が同程度に低下するかはわかりません。確かなのは0%に近づくにつれて下落への抵抗を強めると思われます。それは預金との絡みがあるからです。それにローンの手数料があるので、実質的にマイナス金利になる可能性は少ないでしょう(前に触れたローン減税との組み合わせのケースは別です)。

 

仮に変動金利の今後5年間の平均が0.3~0.4%程度だとしても、次の5年間の平均は1%を超える水準になる可能性は十分ありえます。こうなると10年固定金利0.8%と、利率の点ではほとんど変わりません。となれば、固定金利を選ぶ方がいいことになります。

 

固定金利がいい点は、①不確定要因がなくなること、②利息金額が決まって資金計画を立てやすいこと、③10年0.8%水準の金利は十分安いことです。結果的に固定金利の方の利率が高かったとしても、それはリスクヘッジのコストあるいは保険と考えれば、損をした気にはならないでしょう。

 

【固定金利と変動金利】

 

本連載は、2016年8月刊行の書籍『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』(フォレスト出版)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

金利が上がらない時代の 「金利」の教科書

金利が上がらない時代の 「金利」の教科書

小口 幸伸

フォレスト出版

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