今回も、シェアリングエコノミーが台頭する中で、社会がどのように変化していくのかを見ていきます。※本連載は、東京大学大学院の技術経営戦略学専攻特任教授である阿部力也氏の著書、『デジタルグリッド』(エネルギーフォーラム)の中から一部を抜粋し、電力自由化・インターネット化で大きな転機を迎えている、電力業界の実情を見ていきます。

「協働型消費」の成功原則に適合可能な太陽光発電

レイチェル・ボッツマンとルー・ロジャースは、その著書「SHARE シェア」において協働型消費と名付ける新しい経済トレンドの爆発的成長について様々な事例をあげ、論を展開しています。

 

協働型消費の成功事例に関する4つの原則は、クリティカルマス、余剰キャパシティー、共有資源の尊重、他者への信頼であると言っています。クリティカルマスとは、この協働型消費に参加する人々の人数が一定の数を超えると爆発的に参加者が増えだすという現象を意味しています。余剰キャパシティーは提供する設備は余っているということ、共有資源の尊重は参加する人々が共有資源に対する敬意を持っていること、さらに参加者がお互いに信頼しあっている、というような条件が成功を生みだす4原則だと言うのです。

 

太陽光発電はこの4つの原則にぴったり当てはまる可能性があります。

 

日本ではまだ住宅用の太陽光発電を保有する人々の数は、クリティカルマスに達しているとは言えないでしょう。しかし、日中などに住宅で消費しないために余ってしまった太陽光発電の電力は余剰キャパシティーにあたるでしょう。

 

この余剰キャパシティーを共有資源として、地域コミュニティーやケアハウス、学校、病院などに寄付をし、寄付を受けた側は何らかのリターンを寄付者に返すというようなシェアリングエコノミーが生まれてくるのではないでしょうか?

 

最初はビジネスベースになるかもしれません。

 

その場合でも、余剰電力は地域の再エネ普及に貢献している企業や商業施設、例えばスーパーマーケット、家電量販店、レストランなどに無料で提供され、そのリターンとして環境に良い食品や製品あるいは食事などの提供を割安に受けることができる、というような形態も生まれてくるかもしれません。

経済的な利益ではなく、社会的な価値の追求が目的

このようなことが可能になるのは、インターネットの発達により、あらゆる取引コストが限界まで安くなったからです。

 

再エネの台頭を単に電気料金だけで表現するのはもはや適当ではありません。

 

協働消費型のエコノミーに関わるプロシューマー達は、もはや、わずかな電気代の差額で利益を追求するという人々ではなくなっています。社会的な価値を追求する集団となっているのです。

 

このような人々の気持ちをうまくつなぎ合わせる仕組みができれば、あっという間にクリティカルマスを実現することができるでしょう。

 

カウチサーフィンは、無料で宿泊場所を提供し合う非営利型の経済モデルです。AirBnBの有力な競争相手として急速に台頭してきました。カウチサーフィンは、その使命を社会的な価値や宿泊者と宿泊場所の提供者間に生まれる友情の絆に置いています。「カウチサーファーが出会った人々と人生をシェアし文化交流と相互尊重を促進する手助けをするのが目的である」と謳っています。

 

確かに宿泊設備は個人の所有物ですから、誰かを泊めたからといって新たに追加費用がかかるわけではありません。しかし、このようなビジネスモデルが機能するのでしょうか? いや、リフキンはビジネスモデルと言ってはいません。協働型コモンズ経済が台頭してくる、と言っているのです。

 

にわかには信じがたいでしょうが、無料のサービスであるカウチサーフィンはAirBnBを超えて、207カ国97000都市で活動し、550万人の会員を獲得した(ホームページによると1200万人に拡大)とリフキンは言っています。

 

リフキンは限界費用ゼロの現象として電子出版、再生可能エネルギー、製造業における3Dプリンティング、オンラインの高等教育、音楽なども挙げています。

 

すでに世界中で何百万というプロシューマー達が、自らが使う、環境にやさしい電力を、限界費用をほぼゼロで生産しています。

 

彼らが、経済性の議論を無視して、社会的な価値を、地球環境を守るということに置く、そのために立ち上がる、と言い出したらどのようなことが起こるでしょう?

 

電力の世界で限界費用ゼロのエネルギーが、果たしてどのようなインパクトを与えるのでしょうか?

デジタルグリッド

デジタルグリッド

阿部 力也

エネルギーフォーラム

電力がかつてないほど市民の口の端に上るようになり、さまざまな議論が活発になされるようになりました。しかし、電力の仕組みをわかりやすく解説した本が少ないのが現実です。 その点で本書は、図を一切使わず電力技術が誰に…

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