今回は、外国人を雇用する経営者が知っておくべき、「不法就労助長罪」の概要を見ていきます。※本連載は、至誠法務労務サポート代表、社会保険労務士、行政書士の井出誠氏が、経営者が外国人を雇用する際の基礎知識を解説します。

コックとして雇用した外国人にレジ担当をやらせると…

グローバル経済に起因して、外国人労働者の需要が右肩上がりの我が国において、外国人労働者の受け入れを増やせば、どうしてもそれに比例して、不法就労の外国人等も増えてきます。これは、とても悩ましい問題です。

 

経営者として、もし不法就労の外国人を雇ってしまった場合、雇用した側(会社や社長)にも何らかの罰則があるのか、また、その前提として、そもそも不法就労とは何を指すのかということを雇用主は知っておく必要があります。

 

まず、我が国において「不法就労」とは、下記の①~④の場合が考えられます。

 

①日本に不法に入国・上陸した正規の在留資格を持たない外国人が行う収入を伴う活動。(不法入国者等)

 

②与えられた在留期間を超えて不法に残留し、正規の在留資格を持たない外国人が行う収入を伴う活動。(オーバーステイ等)

 

③就労不可の在留資格を得ている外国人が、資格外活動許可を受けずに行う収入を伴う活動。

 

④就労の在留資格を得ている外国人が、与えられた在留資格の範囲を超えて行う収入を伴う活動。

 

上記①の不法入国者を積極的に採用しようという経営者はあまりいないでしょう。②は、短期滞在の在留資格で入国し、その在留期限が切れても日本に滞在し就労を繰り返すようなケースが多く見受けられますが、そもそもオーバーステイは、在留カードを見れば、一目瞭然で在留期限が確認できますので、対応策はそれほど難しくありません。③の資格外活動許可の有無も②同様、在留カードを見れば確認可能ですね。

 

問題は④です。就労の在留資格は、それぞれその活動範囲が決まっています。会社は、外国人労働者に対して、日本人労働者のようにあらゆる仕事を指示できるわけではなく、入管法で定められた活動範囲内の仕事のみ行わせることができます。

 

したがって、例えば「技術」の在留資格を所持し、中華料理店でコックとして働いているものを、ホールスタッフやレジスタッフとして単純作業に従事させることはできないのです。在留資格と実際の仕事の関連性には十分注意が必要です。

雇用主側が「知らなかった」ではすまされない

さて、具体的な罰則を見ていきましょう。入管法には「不法就労助長罪」というものが定められています。「不法就労助長罪」は、下記①~③を処罰の対象としています。

 

①事業活動に関し、外国人を雇用するなどして、不法就労活動をさせる行為

 

②外国人に不法就労活動をさせるために、これを自己の支配下に置く行為

 

③業として、外国人に不法就労活動させる行為又は②の行為に関してあっせんする行為

 

上記に該当した者には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処せられてしまいます。

 

以上のようなことから、雇用主は、外国人労働者と雇用契約を結ぶ際には、事前に必ずパスポート及び在留カードを十分確認し、在留資格の種類、在留期限、資格外活動許可の有無、更にはその在留資格が許容する仕事の範囲と実際の仕事の該当性等のチェックをしっかりと行うことが、会社の自己防衛にもつながってきます。

 

ちなみに、雇用主が「不法就労外国人である事を知らないで採用してしまった」と弁明したとしても、状況からみて、確認を怠ったがゆえに雇用してしまったような、知らない事に過失があった時も、処罰は免れませんので、ご注意ください。

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

※外国人就労ビザ相談センター八王子
http://www.visa802.com/

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