今回は、通貨オプションなどの複雑なデリバティブ商品が抱えるリスクについてお伝えします。※本連載は通貨・国際投資アナリストの小口幸伸氏の著書、『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋し、「マイナス金利時代」を生き抜くために個人投資家が知っておくべき大原則をお伝えをしていきます。

値段が妥当かどうか、買う側がわからない商品は回避

「ドル円の為替レートが期限内に100円以上の円高にならなければ、あなたの円預金には5%の利息がつきます。ただし一度でも100.00を下回れば、預金はドルで償還されます」

 

直物レートが120円程度で推移しているときに、こうした商品を金融機関が売りに来たらどうしますか。

 

円安ムードが強いときにこうした商品を目にすれば、とても魅力的に映るでしょう。100円を切るような円高は考えられないと思うからです。

 

しかしそれはあなたの感覚であって、市場の見方ではありません。市場での100円割れのリスクを計量化して、こうした商品の価格設定がなされています。

 

この商品は単純な預金商品ではないことはわかります。円で償還される場合もあるし、ドルで償還される場合もあります。そこに為替レートが加わります。

 

実はとても複雑な商品なのです。複雑にさせているのは、通貨オプションという金融商品が絡んでいるからです。

 

通貨オプションとは通貨を売買する権利のことで、通貨オプション取引とはこの権利を売買します。買う側は手数料を払い、売る側は手数料をもらいます。

 

通貨オプションには、あらかじめ決めたレートで売買する権利を売買する単純なオプションをはじめ、一定の期間内にあらかじめ定められたレートになると、取り決めておいた通貨オプションが消滅する商品や、逆に定められたレートになるとオプションが発生する商品など、多様なものがあります。ここでは商品の具体的な説明はしませんが、要はこうした商品が組み込まれているわけです。

 

オプションの価格は為替レート、金利、ボラティリティー(変動率)、期間などの要素をオプションのシステムにインプットして出します。手作業でもブラック・ショールズモデルの計算式で、一部のオプションの価格はある程度算出できますが、手間はかかります。普通はシステムを使います。

 

オプションの価格を算出するシステムは金融機関や一部の企業は持っていますが、個人で持っている人は少ないでしょう。

 

ということは、冒頭の商品の値段が妥当かどうか、買う側はわからないということです。売る側はもちろんわかっています。相手が値段に関してわからなければ、売る側は手数料を多めに取ります。多めが法外であってもわかりません。

リスクが明確で管理しやすいことが重要

通貨オプションはデリバティブ(派生商品)の一つです。こうしたデリバティブ商品などを組み入れた商品を仕組み商品、上記の商品は預金だから仕組み預金とも言います。預金ではなく債券ならば仕組み債(券)と言います。

 

通貨オプションではなく、株価オプションなどを組み入れる商品もありますが、基本構造は同じです。

 

こうした仕組み商品は利益率が高いので金融機関は売りたいわけですが、投資家からすれば、リスクや価格の妥当性もよくわからない、手数料も高い、といってもこの手数料は銀行や証券会社が表記する手数料とは違います。販売担当者も知らない、商品を組成する者だけが知るマージンです。

 

したがって、個人投資家の場合、できるだけ単純な商品の方が有利です。債券、株、為替、預金、それぞれリスクがわかりやすく、価格の透明性が担保されている商品です。

 

為替リスクを取りたいならそれだけの商品であるFXの方がわかりやすく、リスク管理がしやすいでしょう。外貨預金までならまだしも、外貨建て債券は為替リスクと債券価格の変動リスクがあるので、リスク管理は難しくなります。

 

投資信託も同様で、中身が理解できないものは避けるべきです。専門のファンドマネージャーが運用しているからいいだろうという人もいるでしょうが、それは過大評価です。優秀で実績のある人ばかりではありません。

 

いずれにせよ、投資で大切なのは、リスクが明確で管理しやすいことです。それにはなるべく単純な商品を選ぶことです。

 

【図表 金融商品の複雑度】

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    本連載は、2016年8月刊行の書籍『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』(フォレスト出版)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    金利が上がらない時代の 「金利」の教科書

    金利が上がらない時代の 「金利」の教科書

    小口 幸伸

    フォレスト出版

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