2016年に日本でも始まった「マイナス金利」政策。その影響はさまざまな方面に及んでいます。本連載は通貨・国際投資アナリストの小口幸伸氏の著書、『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋し、「マイナス金利時代」を生き抜くために個人投資家が知っておくべき大原則をお伝えしていきます。

マイナス金利の時代には「安全な高金利商品」はない

市場にマイナス金利が広がる中では、利回りの高い金融商品を見つけるのは難しくなります。だからこそ「高金利商品」と言われると、惹きつけられます。こうした投資家の心理状況を利用して、金融機関は高金利商品を売ろうとします。

 

まず心得ておくことは、マイナス金利の時代には安全な高金利商品はないということです。高金利商品が成立するとすれば、それは投資家がリスクを負うから成り立つわけです。リスクを負う部分が多ければ多いほど高金利になります。

 

そのリスクは様々です。信用リスク、為替リスク、リーガルリスク、流動性リスク、デュレーションリスクなどです。

 

例えば、信用力の低い、つまり倒産の可能性の高い社債の利回りは高くなります。高利回りは信用リスクの代償です。海外の債券は多くの場合、日本より高利回りです。日本の投資家がベースにする円は世界でも最も低金利の通貨の一つなので、相対的に海外の債券の利回りは高いですが、投資家は為替リスクを負うことになります。購入時の為替レートと比べ、償還時の為替レートが一定以上の円高になると損失を被ります(詳しくは次の項目で説明します)。

 

法的に問題があるような債券は利回りが高いことがあります。例えば、米国などが取引規制をしている国の債券などです。投資家は一般的には敬遠しますが、リーガルリスクと引き換えの高利回りです。流通市場での取引が少ない債券も、いざ売るときには、市場が示す価格よりもかなり安く売らざるをえなくなることがあります。場合によっては値が付かず、なかなか売れない可能性もあります。これは流動性リスクです。また債券の利回りは一般的に期間が長ければ高くなります。リスクプレミアムが大きくなるからです。これはデュレーションリスクです。

 

【図表 高金利商品の様々なリスク】

 

このように様々なリスクが高利回りの要素になっていますが、投資家はその点をよく理解して商品を購入すべきです。

自分が理解できない商品を購入するのは控えるべき

とはいっても問題は、そのようなリスクを投資家が把握できるかどうかです。商品によっては様々なリスクが絡んでいて、リスクを把握し難いものもあります。例えばデリバティブ商品を組み合わせた仕組み商品などです。

 

販売する側が、商品の組成についての理解不足から、リスクを理解していないケースもあります。大手の金融機関といっても、セールス担当は専門家ではありません。彼らに頼るよりも自分で知識を増やして理解すべきです。そして商品のリスクがどんなものか、そのリスクが自分にとって許容範囲かどうかを把握したうえで、商品の購入のタイミングを決めるべきです。

 

自分が理解できない商品を購入するのは控えるべきです。

本連載は、2016年8月刊行の書籍『金利が上がらない時代の「金利」の教科書』(フォレスト出版)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

金利が上がらない時代の 「金利」の教科書

金利が上がらない時代の 「金利」の教科書

小口 幸伸

フォレスト出版

2016年の年明け早々、日本列島に衝撃が走りました。日銀による「マイナス金利」の発表です。 「金利がマイナス」とはいったいどういうことでしょうか? これまでもずっと低金利の時代が続いてきましたが、ここにきて金利は…

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