大手企業の傘下に入ることで事業拡大に成功した事例

M&Aにおいて、売り手と買い手の両企業に最も重要なことは、事業を継続し、未来を創造していくことです。本連載では、売り手と買い手の両企業がM&Aでシナジーを発揮し、ともに企業価値を高めることができた6つの成功事例をご紹介します。

買い手の候補やスキームはM&Aの目的によって変わる

本連載では、M&Aによって売り手企業と買い手企業がシナジーを発揮し、ともに企業価
値を高めることができた6つの成功例をご紹介します。

 

売り手企業の社長にとっては、何のためにM&Aをするのかという「目的」が重要です。その目的によって買い手候補企業の選定も変わってきますし、提案するスキームも変わってきます。

 

たとえば、会社を大きく成長させたいが資金不足に悩んでいるのであれば、大手上場企業の傘下に入ることで資金や販路、人材などの資本の注入を受けることができ、さらには社会的な信用を得ることで目的を実現していくことができます。そのためには、株式を20%譲渡して関連会社になるのがいいのか、それともオーナー権を手放すことになっても50%超のマジョリティを譲渡して子会社となり、雇われ経営者を続けるのがいいのか、など選択するスキームが変わってくるのです。

 

一方、後継者がおらず事業承継に悩む社長であれば、株式を100%売却することで買い手企業に会社を引き継いでもらい、ご本人は創業者利益を手にして引退する、または新しい事業を立ち上げるという選択もあります。

 

本連載で紹介する6つの成功例をお読みになれば、M&Aとは、ただ会社を売却すればいいというものではないことを理解していただけると思います。そして、売り手と買い手両企業にとって最も重要なことは、会社を継続し、未来を創造していくことなのだと実感していただけるでしょう。

M&Aで資金不足を解消、数年で売り上げを約6倍に

<成功事例①>

父親から会社を受け継いだ後に売り上げを4倍ほどに成長させた若手社長でしたが、資金不足による成長の限界を感じ、隣接業種の部門を持つ大手上場企業のグループ子会社になることを決意。資本注入を受けたことで他地域への進出と規模拡大を実現し、さらに数年で売り上げを約6倍に急成長させた成功例です。

 

売り手企業のA社は、関西に拠点を置く中規模ドラッグストアでした。もともとは社長のM氏の父親が開業した薬局で、その当時の売り上げは15億円規模。地域に密着した経営を続けていましたが、後継者としてM氏が会社を引き継いで、日本にドラッグストアが誕生したのをきっかけにチェーン展開を開始。その後、売り上げを50数億円までに成長させていました。

 

当初、M社長は会社を引き継ぐ気はまったくなかったといいます。全国に名前の知られる名門進学高校に入学したものの、まるで勉強に興味が持てず、同級生が有名一流大学に進学するのを尻目に世界放浪の旅に出ます。すると数年後、父が病に倒れたとの知らせが届き、帰国。その後、父が他界したために会社を引き継いだのでした。

 

M社長は銀行からの融資を受け、店舗数を拡大していきましたが、会社の成長スピードが鈍化。そこでM社長は、次のように私に相談されたのでした。

 

「最近、急成長しているチェーンストアのY社をご存じでしょう。いずれ必ず関西地域にも進出してきます。だから、今のうちに何としてもこのエリアをわが社がドミナント化しておきたいのです。大塚さん、私はもっと早く会社を大きくしたい。しかし、個人提供している担保としてはもう借入額が限界なのです。こつこつと会社の利益を出していけば銀行は貸付枠を増やしてくれますが、銀行からの融資枠の増額を待っていては出遅れてしまう。そんなスピードでは間に合わないのです。少しずつ店舗数を増やしていくのでは勝負になりません。私は一気に拡大したいのです」

 

急成長を遂げている会社が成長の壁にぶち当たる原因の一つに資金不足があります。A社もまさにその例でした。会社には成長のチャンスがあり、社長は前向きな攻めの経営をしたいにもかかわらず、会社を拡大できないジレンマを抱えていたのです。

 

そこで私は言いました。

「M社長はオーナー権にこだわらず過半数の株式を他社に持たれてもかまいませんか? であれば、必ず御社が成長できる方法があります」

 

株式の50%超(マジョリティ)を相手に持たれて大手企業の傘下に入ることで会社をさらに大きくしていくことができます。もちろん、オーナー権は手放すことになりますが、社長として経営を続けていくことができます。

 

M社長は、「もし、それができるのであればオーナーであることにはこだわらない」と言いました。そこで私は、その場で買い手企業の検討に入りました。A社にぴったりの買い手候補企業が私の頭の中にはいくつかあったのです。

本連載は、2016年3月10日刊行の書籍『会社売却の心得28カ条』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

企業活性パートナーズ株式会社 代表取締役社長

昭和30年12月生まれ。東京大学工学部卒業。スタンフォード大学客員フェロー。昭和53年4月、山一證券株式会社入社後、株式会社レコフ主席執行役員などを経て、平成24年6月、企業活性パートナーズ株式会社代表取締役社長就任(現任)。通産省「店頭市場研究会」「MBO研究会」「企業価値研究会」各委員歴任。M&Aのディール責任者として100件以上の案件成約に関与。電機業界、ソフト・情報産業、流通、住宅、金融、外食、エネルギー、機械等、幅広い業界のM&Aを経験している。

著者紹介

連載売り手と買い手の企業価値を高めたM&A成功事例

会社売却の心得28カ条

会社売却の心得28カ条

大塚 武樹

幻冬舎メディアコンサルティング

後継者不在、業界の先行き不安、事業拡大の資金不足など、中堅・中小企業経営者が抱える悩みは実にさまざまです。これらの悩みを解決するための手法として、本書では「会社売却」で知っておくべきこと――M&Aを検討すべきタイ…

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