前回は、地下空間に多くの配管が張りめぐらされた工場で、ウレタン樹脂を床下に注入した事例をご紹介しました。 今回は、この工法ではどれぐらいの間隔で、ウレタン樹脂の注入孔を設けるべきなのかを解説します。

隣の孔から注入された樹脂と十分に重なることが必要

Qどれくらいの間隔でウレタン樹脂を注入していくのですか?

 

縦横1メートル間隔、つまり格子状です。これには理由があります。

 

施工後、基礎の土間コンクリート下のウレタンに隙間があると、全体で基礎を支えることができず、建物の荷重は一部にしかかからないことになってしまいます。すると、建物を支えきれなくなった基礎は、間もなく傾きます。また、床にでこぼこが生じたり振動が発生したり、最悪の場合は床が陥没することもありえます。ですから、どこにも隙間ができないよう、ウレタン樹脂はみっちりと充填しなくてはなりません。

 

そうするために、注入間隔は1メートルを保つ必要があります。

 

と申しますのは、圧力をかけて樹脂を土間コンクリート下に注入していくと、注入された樹脂は化学反応を起こし、発泡してさらに自ら圧力を生みながら広がり、クリーム状態→ゲル状態→固体と状態を変えていきます。この時、樹脂が広がる範囲は、土間コンクリート下の状態、土質によっても多少の差はありますが、ほぼ、半径1〜1・5メートル。

 

仮に、注入孔が3メートル間隔であったとします。樹脂が半径1メートルの範囲で広がった場合、この間隔では「隣」の孔から注入された樹脂とは重なり合うことが不十分になってしまいます。

 

この隙間は、注入間隔が広ければ広いほど大きくなります。そうしてできた床下の空隙は、再び床の傾き・たわみ、最悪の場合には陥没事故を招きかねません。

建物を寿命まで使えるようにするための「ルール」

縦横1メートル間隔の注入とは、土間コンクリート下での樹脂の拡大範囲が充分に重なり合い、実際の施工において、樹脂が行き渡らない箇所——ウレタン樹脂の隙間をつくらないための、つまり、建物を恒久的に(建物自体が寿命を迎えるまで)使えるようにするための「ルール」なのです。

 

■ウレタン樹脂の注入間隔と施工後の床下の状況

注入間隔3mの場合

注入間隔1mの場合

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    本連載は、2016年11月25日刊行の書籍『改訂版 不良品が多い工場の原因は地盤が9割』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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