本連載では、不動産コンサルタントの山本芳治氏の著書、『増補改訂版 公図・不動産登記簿の読み方・調べ方』(ビジネス教育出版社)の中から一部を抜粋し、実務にすぐに役に立つ、不動産登記簿と公図の調査方法をご紹介します。

「登記所」という名前の役所は存在しない!?

金融機関の融資担当者が不動産を担保として融資をするかどうかというときや、また債務者や連帯保証人が資産を持っているかどうかの調査をするときなど、登記所に行って公図をとったり、不動産登記簿(登記事項証明書・登記事項要約書)をとったりします。また、不動産業者の方がお客様から土地や建物を購入したいという相談を受けたときなど、いろいろ調べなくてはならないことがありますが、そのうちの一つに、売買等の対象となる土地や建物の所有者が誰であるかとか、抵当権等がついていないかどうかなどを調べることになります。


登記所で金融機関や不動産業者らしき人が、公図の見方や不動産登記簿のとり方を後輩に指導している光景などもよく見かけます。また、個人の方が、どうしたらよいか右往左往した末に、登記所の職員に質問していることもよくあります。そこでまず、登記所とはどのような役所なのかということについて見ていきましょう。


◆登記所とは、どのような役所か


「登記所」という言葉は、みなさんも日頃よく聞いていると思いますが、日本全国どこを探しても「登記所」という看板を掲げている役所はありません。「登記所」という呼び名は、商業登記では商業登記法1条の3、また不動産登記の場合は不動産登記法6条1項に「登記の事務は、不動産の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所(以下、単に「登記所」という。)がつかさどる」と規定されています。


つまり、法務局等が国家機関として商業登記や不動産登記に関する事務を取り扱う「登記所」ということになります。実務では「登記所」という名前が一般に使われていますので、ここでは法務局等のことを「登記所」と呼ぶこととしておきます。


平成28年1月14日現在、全国には8カ所の法務局(東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松)と42カ所の地方法務局(横浜地方法務局など)、262カ所の支局(八王子支局など)、107カ所の出張所(東京法務局港出張所など)の合計419カ所の登記所があります。中央の役所は法務省です。商業登記は法務省民事局商事課が、不動産登記は民事第2課が担当しています。


なお、供託金関係の事務を取り扱うのも登記所ですが、これはすべての登記所で取り扱っているわけではありませんので注意が必要です。

管轄地域が定まっているので、事前に電話等で確認する

◆管轄登記所を事前に調べておこう


登記の事務をどこの登記所で取り扱うかを決めることを「登記の管轄」といい、これによって定められた登記所を「管轄登記所」といいます。管轄地域は行政区画(市区町村)を基準として法務大臣が定めていますので、その不動産の所在地によってだいたい見当がつきますが、住所と異なる場合があったり、また、登記所によっては商業登記は扱わず、不動産登記のみしか扱っていない登記所もありますので、事前によく調べておく必要があります。


そうでないと、せっかく登記所に行ってもムダ足になることもあります。さらに、念のため登記所に確認の電話をし(建て替えのため仮庁舎に移転していることもあります)、最寄りの駅や道順、何時までに行ったらよいか、といったことなども聞いておきましょう。時間によっては、午前の受付でも登記事項証明書を受け取るのが午後になったり、翌日になってしまうこともあります。


管轄登記所を調べる方法としては、


・インターネット(法務局ホームページ)、電話帳等で調べる

・市区町村の固定資産税係に問い合わせる

・『全国登記管轄等一覧』(商事法務発行)


などの方法があります。


現在は、すべての登記所でコンピュータにより事務を取り扱い、電子通信回線を使って最寄りの登記所から全国の異なる登記所直轄の不動産および会社・法人の登記事項証明書を入手することができる扱いとなっています。これを「登記情報交換システム」といいます。


注:不動産登記の種類やその申請の仕方、不動産登記簿の交付申請手続等については、不動産登記法、不動産登記令、不動産登記規則および不動産登記事務取扱手続準則等で定められています。会社の設立や役員変更登記の申請の仕方・商業登記簿の交付申請手続等については、商業登記法、商業登記規則および商業登記等事務取扱手続準則等で定められています。

増補改訂版 公図・不動産登記簿の 読み方・調べ方

増補改訂版 公図・不動産登記簿の 読み方・調べ方

山本 芳治

ビジネス教育出版社

契約書および登記申請書からの読み取り方。手続法である不動産登記法だけでなく実体法である民法の学習にも役立つ。

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