今回は、リフォーム工事における「標準的な契約書」について説明します。※本連載では、犬塚浩弁護士の編著で、髙岡信男弁護士、岩島秀樹弁護士・一級建築士、竹下慎一弁護士、宮田義晃弁護士の共著『リフォーム工事の法律相談』(青林書院)より一部を抜粋し、リフォーム工事の「契約時」における法的な知識について分かりやすくQ&A方式で解説します。

住宅リフォーム工事用の標準的な契約関係書式とは?

Q

今回長年住み続けた自宅を高齢者向けにリフォームすることにしました。

 

そこでいくつかのリフォーム業者に説明に来てもらって話を聞き、ある業者に注文することにしました。そしてこの業者から契約書を見せてもらったのですが、住宅に関しては新築住宅を注文したとき以来補修・修繕工事を発注したこともなく、示された契約書が適正な内容かどうか判断がつきかねます。

 

リフォーム契約に関する標準的な契約書はないのでしょうか。

 

A 

リフォーム工事については一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が「住宅リフォーム工事標準注文書・請書(小規模工事用)」を作成しているほか、日本弁護士連合会が「日弁連住宅建築工事請負契約約款」を作成し、そのほか国土交通省が建設工事標準請負契約約款(リフォーム工事を対象とするのは、いわゆる「乙約款」といわれるもので、民間の比較的小さな工事(個人住宅等)を対象とするもの)があります。

 

1 住宅リフォーム工事標準注文書・請書

⑴目的

一般社団法人住宅リフォーム推進協議会(以下「推進協議会」といいます)の作成している「住宅リフォーム工事標準注文書・請書(小規模工事用)」(以下「標準注文書・請書」といいます)は、住宅リフォーム工事用の標準的な契約関係書式を作成し利用することにより、リフォーム工事内容、変更内容を明確化し、消費者、事業者とも安心してリフォーム工事が行えることを目指して作成されました。

 

これは、良質な住宅ストックを形成するため、消費者の多様な居住ニーズに対応した適切なリフォームによる住宅の質の維持・改善が重要になっており、高齢化社会の到来を迎え、高齢者が安全に暮らせるようにバリアフリー化のための住宅リフォームを推進する必要があるところ、現状のリフォーム工事、特に小規模なリフォーム工事においては、契約書を取り交わしていない、又は曖昧な内容による契約や安易な変更等によるトラブルが多く発生していることによるものです。

 

⑵想定している住宅リフォーム工事

本標準注文書・請書は、書面による契約が結ばれていない揚合が多い小規模リフォーム工事である構造耐力上主要な部分(柱、梁・耐力壁等)に変更を加えない工事や部品ユニット交換工事を主として想定しています。

 

その一方で本標準注文書・請書は、構造耐力上主要な部分に変更を加える場合や、大規模な住宅リフォーム工事は想定していません。

 

請負金額的には100万円に満たない程度の工事を想定しています。

 

⑶内容

推進協議会のホームページに掲載されている契約書式の内容としては、以下のものがあります*1。

標準契約書式の内容[PDFファイル](2015年2月改定版)

住宅リフォーム工事標準契約書式について(最初にお読みください)

住宅リフオーム工事請負契約書(契約約款含む)

住宅リフォーム工事標準注文書・請書について(最初にお読みください)

住宅リフォーム工事標準注文書・請書(契約約款含む)

住宅リフォーム工事打ち合わせシート

住宅リフォーム工事御見積書

住宅リフォーム工事仕上げ表

住宅リフォーム工事内容変更合意書

住宅リフォーム工事完了書・同完了確認書

建築業の「健全な発展と施工の適正化」を促す約款

2 建設工事標準請負契約約款

⑴国土交通省の建設工事標準請負契約約款(以下「標準約款」といいます)について

建設工事の請負契約については、合意内容に不明確、不正確な点がある場合、その解釈規範としての民法の請負契約の規定も不十分であるため、後日の紛争の原因ともなりかねないこと、建設工事の請負契約を締結する当事者間の力関係が一方的であることにより、契約条件が一方にだけ有利に定められてしまいやすいという、いわゆる請負契約の片務性の問題が生じ、建築業の健全な発展と建設工事の施工の適正化を妨げるおそれがあることに鑑み、建設業法は、法律自体に請負契約の適正化のための規定(同法第3章)を置くとともに、それに加えて、中央建設業審議会*2(以下「中建審」といいます)が当事者間の具体的な権利義務の内容を定める標準請負契約約款を作成し、その実施を当事者に勧告する(建設34条2項)こととしています。

 

中建審は、昭和24年発足以来、標準約款に関しては、公共工事用として公共工事標準請負契約約款、民間工事用として民間建設工事標準請負契約約款(甲)及び(乙)並びに下請工事用として建設工事標準下請契約約款を作成し、実施を勧告しています。

 

この中で、公共工事標準請負契約約款は、国の機関、地方公共団体等のいわゆる公共発注者のみならず、電力、ガス、鉄道、電気通信等の、常時建設工事を発注する民間企業の工事についても用いることができるように作成されたものです。実際に、公共工事標準請負契約約款は、各省庁等の国の全ての機関、都道府県、政令指定都市、公共法人等に加え、電力会社、ガス会社、JR各社、NTT等の民間企業に対しても、中建審から勧告が行われています。また、地方公社、市町村等には、都道府県を通じて勧告されています。

 

⑵標準約款の内容

公共工事標準請負契約約款

民間建設工事標準請負契約約款(甲)

民間建設工事標準請負契約約款(乙)

建設工事標準下請契約約款

 

3 日弁連住宅建築工事請負契約約款

日弁連約款は、消費者のための家づくりモデル約款とも呼ばれるもので、日弁連消費者問題対策委員会では、消費者が家を建てるときの建築請負約款について、消費者にとって著しい不利益をもたらす条項を排除した日弁連モデル約款をとりまとめ、『消費者のための家づくりモデル約款の解説〔第2版〕』(民事法研究会、2011)として発表しています。

 

■注記■

*1 http://www.j-reform.com/publish/shosiki.html

 

*2 中建審は、学識経験者、建設工事の需要者及び建設業者である委員で構成されており、建設工事の需要者と建設業者である委員は同数であり、かつ、これらの委員の数は全委員数の3分の2以下とするように定められています。また、必要な小委員会や専門委員会を置くことができることとされており、建設業に関し、中立的で公正な審議会です。

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犬塚 浩 髙岡 信男 岩島 秀樹 竹下 慎一 宮田 義晃

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