前回は節税効果の高い「小規模宅地等の特例」「特定事業用宅地」の活用法について説明しました。今回は、不動産を個人所有のまま相続した場合と、法人所有にしてから相続した場合の比較について解説します。

「個人」と「法人」の税額を比較してみると・・・

前回の続きです。土地と建物で2億円の物件と不動産以外の預金等が1億円を「個人所有」のまま相続したケースと、「法人所有」にしてから相続した場合の、相続税評価額も見てみましょう。

 

●個人所有

不動産として路線価評価で相続した場合=1億1460万円、小規模宅地の評価減の適用を受けた場合=8180万円。


●法人所有

物件移転後3年超で株式として相続した場合=9168万円(株式評価額、不動産は路線価評価)、物件移転後3年以内に株式として相続した場合=1億6000万円(株式評価額、不動産は購入価格評価)。

 

[図表1]個人所有と法人所有の違い
[図表1]個人所有と法人所有の違い

3年という縛りはありますが、法人所有で相続したほうが、1000万円以上評価額が少なくなっていることに注目しましょう。ただし、3年以内になってしまうとこの方法は取れませんので注意が必要です。また、小規模宅地の50%評価減が、アパート・マンションの敷地全体に使える場合には、個人所有のほうが有利になります。

 

それぞれの物件の規模等によって有利・不利は変わってくるので、慎重に判断することが重要になってきます。

法人を設立した場合の税額シミュレーション

さらに、法人を設立して相続税対策を実行した場合、どの程度の差が出るのかもシミュレーションしてみましょう。ここにそれぞれ土地(1億円)と建物(1億円)で合計2億円のマンション1棟物件があったとします。その物件で、第6回の連載でに紹介した3つのパターンを使ってシミュレーションしたのが、下の図表2です。細かな設定条件や計算は省きますが、計算すると大体次のようになります。

 

●現物出資のケース

相続財産の合計評価額は9168万円。土地建物をすべて現物出資、株主も親(被相続人予定者)となります。資本金は1億1460万円。個人が保有するキャッシュはゼロ。取引に客観性はあるものの、この先の節税は株式の評価を下げるということに限定されます。

 

●法人が銀行ローンの融資を受けて個人から買い取るケース

相続財産の合計額は2億円。銀行から1億5000万円の融資を受けるために、資本金はマイナス3540円。株主は子ども(相続予定者)。親のキャッシュが2億円になるため、その処理が必要。第三者からの融資を受けることで、取引に透明性があるものの、融資が成功するかどうかがポイントになります。

 

●分割払い(返済期間の4分の1を経過した場合)のケース

相続財産の評価額の合計額は1億5000万円。分割払いの未払金が1億5000万円。純資産はマイナス3540万円。株主は子ども(相続予定者)。個人のキャッシュはゼロ円ですが、未収入金債権1億5000万円が相続財産になります。分割払いで支払われるキャッシュを使ってまた物件購入等の節税が可能です。ただし、取引が親子間で不透明感が残ります。

 

[図表2]現物出資、銀行ローン、分割払い――転移のパターン別節税効果
[図表2]現物出資、銀行ローン、分割払い――転移のパターン別節税効果

それぞれの状況によって、節税効果が大きく異なることがわかりますが、いずれにしても税理士などと相談して、自分の状況に応じてベストな方法を選択しましょう。
 

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税は不動産投資と法人化で減らす

相続税は不動産投資と法人化で減らす

成田 仁,富田 隆史

幻冬舎メディアコンサルティング

従来より相続税対策として考えられてきた、アパートや小規模ビルなどの建設。しかし、それこそがリスクをもたらしているかもしれないとした…。 本書は、持て余している土地を収益性の良い賃貸物件に買い替える不動産投資の最…

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