前回は、サラリーマンが法人を使って所得税を軽減する方法について説明しました。今回は、「小規模宅地等の特例」「特定事業用宅地」を活用した相続税の節税法について見ていきます。

効果の高い「小規模宅地等の特例」だが・・・

今回は、法人を設立して相続税を節税した場合について考えたいと思います。相続税がどの程度まで「圧縮」できるのか、さまざまな条件のもとでシミュレーションしてみましょう。

 

とりわけ重要なポイントとなるのが、相続税の計算で最も大きな減税措置である「小規模宅地等の特例」が利用できるかどうかです。結論からいえば、自宅だった物件を子ども名義の法人に譲渡した場合、小規模宅地等の特例は利用できなくなります。

 

法人化せずに、被相続人(生計をひとつにしていた親族を含む)の居住用や事業用に供されていた宅地などは小規模宅地等の特例が利用できますが、法人に譲渡して名義を書き換えてしまった後では、この規定の適用を受けられなくなる場合があります。

 

まずは、法人化する前の小規模宅地の評価減が、どの程度メリットがあるのかを改めてシミュレーションで見てみましょう。時価が1億円、土地面積が500㎡の土地の場合、詳細は下の図表を見ていただくとして、大雑把に計算すると次のような差額が出ることがわかります(平成25年改正後のもの。実施は平成27年1月以降の相続より)。

 

●特定事業用宅地の場合

評価減割合80%、面積400㎡まで、評価減金額6400万円
 

●特定住居用宅地の場合

評価減割合80%、面積330㎡まで、評価減金額5280万円
 

●準事業(貸家建付地)の場合

評価減割合50%、面積200㎡まで、評価減金額1640万円(借地権割合60%)

 

時価1億円の土地を相続する場合、その用途によって、これだけ大きく評価額を減らすことができるケースと考えればよいでしょう。

 

[図表]小規模宅地等の特例のシミュレーションと改正点
[図表]小規模宅地等の特例のシミュレーションと改正点

収益物件が複数あるなら、早めの法人設立を

ここで注目したいのは「特定事業用宅地」であれば1億円は6400万円の評価減が認められるということです。面積制限が400㎡あり、500㎡の8割を80%評価減できるわけです。結果として、1億円の土地は3600万円の評価額となり、これなら基礎控除の範囲内で何とかなる可能性が高いといえます。

 

これが普通の宅地=特定居住用宅地の場合だと、330㎡までしか80%の評価減が認められないために、5280万円の評価減となります。また、いわゆるアパートなど収益物件のような「準事業」のケースでは、借地権・借家権として18〜21%差し引いてくれますが、200㎡まで50%しか評価減を認めてくれません。結局、1640万円しか評価を圧縮できないことになります。

 

ところが、先にも簡単に触れましたが、平成25年の税制改正により、この小規模宅地の評価減は有利になりそうです。特定事業用(貸付事業用宅地等も含む)の400㎡と特定居住用宅地等の330㎡を重複適用できることになりました。その結果、最大730㎡が80%の評価減を受けることができることになります。

 

特定居住用宅地等の80%の評価減と特定居住用または特定事業用で使い切らなかった部分までではありますが、貸付事業用宅地等の50%の評価減の両方を使うことができます。なお、アパート・マンション等を法人に移した場合の株式の評価上においては、適用ができません。

 

ということは、複数の収益物件を持っている人は、自宅とアパート・マンションの敷地のうち特例を受けられる面積までは個人所有にして、小規模宅地等の特例の50%の適用を受けて、それ以外の物件は法人に移してしまうほうがよいといえるでしょう。

 

父親が、1棟物のアパート・マンションといった収益物件をすでに何棟か持っている場合は、早めに法人を設立して、相続物件を譲渡する準備をスタートさせるべきだと思います。

本連載は、2013年8月2日刊行の書籍『相続税は不動産投資と法人化で減らす』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続税は不動産投資と法人化で減らす

相続税は不動産投資と法人化で減らす

成田 仁,富田 隆史

幻冬舎メディアコンサルティング

従来より相続税対策として考えられてきた、アパートや小規模ビルなどの建設。しかし、それこそがリスクをもたらしているかもしれないとした…。 本書は、持て余している土地を収益性の良い賃貸物件に買い替える不動産投資の最…

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