事業の後継者の順位を決める「受益者連続型信託」の活用方法

今回は、事業の後継者の順位を決める「受益者連続型信託」の活用方法を見ていきます。※本連載は、ウィル税理士法人編著(執筆:代表税理士の親泊伸明氏ほか)の書籍、『経営者と不動産オーナーのための信託・相続』(マスブレーン)の中から一部を抜粋し、「信託」を活用した具体的な事業承継対策をご紹介します。

子供のいない長男に何かあれば、嫁に会社経営権が…

<事例>

小川さんには、長男、次男の2人の息子がいます。2人とも事業を手伝っており、安心して息子たちに経営を任せたいと思えるようになりました。

 

小川さんは、前々から2人の子供のうち長男を後継者として考えて、株式70%を贈与により譲ることを考えています。しかし、小川さんは、会社経営については何も心配はないものの、長男について少し不安に思っていることがあります。

 

それは、長男は結婚をしていますが、まだ子供に恵まれていないということです。長男に子供が生まれないうちに長男に万が一のことがあったら、会社はどうなってしまうのか心配しています。

 

<問題点>

会社の株式を長男に譲った後、長男に万一のことがあると、株式は長男の相続人が相続することになります。長男に子供がいない場合には、長男の妻が3分の2の法定相続権を持つことになり、会社の株式が長男の妻に渡ることになります。その後、長男の妻が再婚したら、会社がその再婚相手に渡ってしまうことになりかねません。

 

さらに、長男の妻が亡くなった後には、小川さんとは見ず知らずの再婚相手やその子供が、小川さんの会社を相続することになってしまいます。小川さんとしては、長男に万が一のことがあった場合には、長男の妻ではなくて、次男に会社を譲りたいと思っていますが、遺言では次の相続まで指定することはできません。これらのことを考えると、長男に株式を譲ることについて躊躇しています。

受益者連続型信託で「次の相続の受益者」を指定

<解決スキーム>

信託では、遺言ではできない、自身の相続だけでなく、その次や次の次など、先の相続まで受益者を指定することができます。このような信託を受益者連続型信託といいます。

 

信託財産を会社の株式とし、当初の受益者を長男、長男の死亡後は長男の子供、長男に子供がいなければ、次男と定めておきます。こうしておくことで、長男が死亡していても、長男の妻に会社の株式が渡ることはありません。

 

 

<税金の取扱い>

信託を設定した時点で、長男に贈与税が課税されます。(相続時精算課税制度活用)また、長男から次男に受益権が移転するときにも相続税が課税されます。

 

<注意点>

小川さんが長男に株式を贈与し、長男が遺言で次男に株式を相続させた場合には、長男の妻には、遺留分があります。ただし、上記の信託を設定した場合では、財産権(受益権)は次のように取り扱われます。

 

信託設定時には、小川さんから長男に対して、信託設定時から長男の死亡までの時期にかかる財産権が発生し、長男の死亡後は、長男の死亡後の期間にかかる財産権が次男に発生することになります。

 

次男が取得した財産権は、長男から相続したものではないことから、その受益権は、長男の妻からの遺留分減殺請求の対象とはならないので、長男の妻は次男に対して遺留分減殺請求はできません。

本連載は、2016年10月27日刊行の書籍『経営者と不動産オーナーのための信託・相続』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ウィル税理士法人 代表社員税理士

昭和31年、大阪府出身。昭和52年に日本経営グループの菱村総合税務会計事務所(現 税理士法人日本経営)に入社。平成14年、現 ウィル税理士法人の代表社員として現在に至る。税理士、一級建築士、社会保険労務士、行政書士の資格を有する。

ウィル税理士法人WEBサイト:http://will-tax.co.jp/

著者紹介

連載「信託」で解決する会社の後継者問題

経営者と不動産オーナーのための 信託・相続

経営者と不動産オーナーのための 信託・相続

ウィル税理士法人

マスブレーン

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